死の形状記憶（舞奈香×似蔵） ページ4
路地裏を逃げる舞奈香。それを追いかける浪士に似た通り魔。
ぱしゃり、と一際大きい音。
赤い体液が、雨の雫と共に伝う──何度も感じたことのある痛みが今までのと同じとは思えない。
あまりの痛みに、痛覚が麻痺してしまってる。
舞奈香に考える余裕はなかった───自分に残された時間を節約しようと、術式を使わなかった自分を責めるばかり。
──────気がつけば、人気が無い裏道についてしまった。
─────落書きだらけのトンネル、アスファルトに生い茂る雑草。
────防犯カメラはない、人が来る気配はない。
───嗚呼、完全に追い詰められた。詰んでしまった。
舞奈香が振り向いた瞬間、彼は彼女の懐に走り出す。
その速さはまるで狂犬、いや獣と同じだ。
ざん、という音を舞奈香は自分の足から聞いた。
アスファルトに流れる自分の血────そう視認した後、立っていられず舞奈香は仰向けに倒れた。
「いっ────ぁ」
背中を打ち付けて喘ぐ。
「──────鬼ごっこはもうお終いかィ、お嬢ちゃん？」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・しかし、どうしたものかねェ。
俺を見ても悲鳴の一つもあげやしない。逃げるときも別の事を考えていた様な振る舞い。それどころか・・・・この状態でも平然としている。
──────親切心で教えるとねェ・・・普通俺みたいなモンに出くわしたら、命乞いの一つはするもんだよ？叫んで、喚いて、啼いて───『死にたくない』っていうものだよ？」
倒れこむ舞奈香の上に、浪士に似た人斬りがのしかかる。男は手にした長刀を舞奈香の喉元に突きつけた。
死が目の前に迫っている─────真上に在るのは、仄暗い黒。
舞奈香の眼に感情は無い。呆気ない己の死期を呆然と眺めた。
長刀の切っ先が舞奈香の喉に触れる。
男は愉しげに笑う。
「こんな淡白な嬢ちゃんでも、魂は彩っているといいねェ・・・・。
なァ嬢ちゃん、最期に言い残す事は無いかィ？｣
｢・・・・・・弱い者は搾取され、強い者が生き残る・・・・・これが生きとし生ける者の序列で決して覆らない順番─────だから、こうなる事も分かりきっていた。
・・・・君は後悔するだろうね・・・・その行動を悔やむだろうね・・・・・嗚呼、安心したまえ───
そうして、舞奈香の意識は完全に途切れる。
仄暗い蒼が、男の視界を瞬いた。
────────────────────。
死の形状記憶（�供泡�←Love me more！(土方×希美）
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
