Tokyo teenager’s rondo-Zwei- (ページ16)

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名もなき詩（衛兵×鬼兵隊）ページ16

──────Watch(衛兵)

十三階段の総統括である春咲美麗からスカウトされた四十八人の術者で構成された組織。
神話礼装器の開放者、過剰強化(オーバードーズ)保持者だけでなく、ありとあらゆる術者が在籍する。
主任務は術者犯罪の取り締まり、十三階段の特異点調査に派遣された時の代役。
日本の術者社会の総本山である東京の治安を守る存在である。
──────しかし、彼らの名前を誰ひとりとして覚えるものはいない。
彼等の奮闘は、日常という雑多に掻き消されてしまう。

──────十三階段に満たない防人。
──────十三階段の代替品(オルタナティヴ)。

日の目が差すことのない日の影。
未満者の彼らが、紅く灯る電波塔に存在するなど、道行く人らは知りもしない。

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「・・・・・・・・・・隈谷が、瀕死の重症を・・・確か隈谷って・・・序列八位の──────！」
ベレー帽を被った短い銀髪の少女は肩に羽織った上着を揺らして驚きの表情を浮かべる。
Watch(衛兵)に所属する術者は、例外なく実力順にナンバリングされている。
特に序列の上位七組は組織全体の指揮を任されるという。
─────────隈谷沙理の序列は八位。もう一段上がれば指揮官の権限が与えられるという実力者が瀕死の重傷を負うなど、彼女をよく知る尾上雪花は絶句をせざるを得ない。
その傍らで、ストリートなファッションをするサイドテールの少女はメタリック塗装のされたヘッドフォンを外し口を開く。
「遂に港区にも来たか・・・・件の目無し鬼と千人斬りは」
「目無し鬼と千人斬り・・・・岡田似蔵と河上万斉の事だよね。レナ」
「・・・・・多分、隈谷沙理は岡田似蔵に襲われたね。
あいつは野獣そのもの。綺麗な魂を求めて無差別に人を斬る、鮮血の匂いに酔いしれて人を斬る、猟奇的に昂り笑っては人を斬る──────苛烈でイカれたサイコキラーさ」
まるで海外の殺人鬼だと、神代レナは嫌悪感を剥き出して呟く。
「異世界から来た快楽殺人狂(シリアルキラー)。出逢えば死亡は確実的・・・一体いつから現代日本は無法地帯になったのかい。くわばらくわばら」
「魔術が発展した時点で治安は悪いぞ、一織」
サバゲーを彷彿させるつなぎを着た山伏一織は、スーツ姿の杜崎晃になだめられる。
飄々とした笑みを浮かべる一織。しかしその目には、焦りの色が見えた。