【企画小説】夢幻の如く【リレー小説】 (ページ4)

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4:なだらかに暗転ページ4

《色欲の悪魔》

堕ちる――
俺はぽつりと呟く。
ただぼんやりとした意識の中、散り散りになる仲間達を見ていた。あまりに騒然としていて夢でも見ているような気分に陥る。
状況に対して、脳は酷く穏やかだった。

つんざく悲鳴が、遠のいていく…

**

「…主！！」

とび上がって目を覚ます。視界に映るのは、一面の青。それが空であることに気づくまで、俺は暫く目を瞬かせていた。

下界？

目移りするままに前を見れば、奇怪そうなものをみる目をした人間衆の、数多の視線が俺に突き刺さっていた。

「ど、どうも…」

少しの沈黙を破ったのは、腕っ節の強そうな巨漢だった。

「あ、怪しい！！コイツぁきっと妖だ！」

「待てっ、待ってくれ、俺は妖じゃない！！妖がこんなイケメンなわけないじゃないか！！」

「うるせぇ！！やってしまえ！！」

野郎共が一斉に飛びかかってくる。四方からの柔らかくない胸板に押しつぶされる感覚に苛まれ軽い人力拷問にかけられた気分になる。畜生、どさくさにケツを触ってんのは誰だ！俺は着物のあわせがはだけるのを気にする余裕もなく顔面青白で抵抗した。

すると突然、大きく縦に揺さぶられるような爆発がおこる。それから大勢の人間が悲鳴をあげて走ってくるのは間もないことだった。…背後に妖を引き連れて。

「あ、妖だ！逃げろぉおっ！！」

さっきまでは威勢が民衆は、俺を拘束する腕をやすやすと離して一目散に逃げ出した。
…滑稽なこった。

ようやく落ち着いた俺は、深呼吸をする。
人々がこちらへ向いて走ってくる中、一線前へ出る。そしてひとり、緩慢な動作で、流れに背いて歩みを進めた。

「俺は非道い悪魔。人間を助けるなんて善人みたいなこと癪だけど」

誰に話す理由でもない。ただ妖を見据えながら呟いてみる。勿論、妖は聴く耳などもつはずもない。今にも人間へと襲いかかろうとしている。

「悪人も嫌い。同族嫌悪かな？」

顔を歪める。
ゆっくりとしてきた足取りは少しずつ加速する。空気を切るように前へと進んでゆく。全身全霊妖へと意識を寄せる。そして、

地を蹴り、妖の背後へと高く舞い上がった。

「俺の名は、ルクスリア」

振り上げた刀が、煌めく。