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Aside
次の日 18:00
成さん。そろそろかなあ。
直木賞の発表はもう終わっているだろう。私は成さんからの電話を待ちながら余白堂で勉強をしていた。
pipipipi
「もしもし!」
「もしもしA?ダメだったよ。心淋し川だった。」
「え?」
端末越しに空気が重くなる。
「そ、そっか...」
「ごめんね。期待に応えられなくて」
「ううん、謝らないで。あっ、あのさ」
「うん?」
「気持ち、大丈夫?」
「…大丈夫ですよ」
私が初めて読んだ「エッセイ」に出てくる一文。でもその大丈夫はとても悲しく聞こえた。
だから、
「私っ、成さんのこと本当に尊敬してるから。成さんのなんでも出来るところ、本当にすごいと思う。」
「きっと今すごく辛いと思うけど、どうか気負わないで___」
「なにが」
「え?」
「何がわかるの。たった17年しか生きてないお前に」
「えっ、あっごめんなさ」
「俺、やっぱ気持ちダメだよ。すんごい悔しい!辛い!
だからそれを抉らないでよ。立場的にお前はファンの1人なんだから」
pi___
…
…
いつの間にか溢れた涙。それは止まることなく私の頬を濡らす。
なんてことを言ってしまったのだろう。私、調子に乗って、た?
成さんの言う通りだ。私はただのファンで、本当はこんな私が成さんに近づける相手じゃないんだ。
どうして忘れていたのだろう。
……やはり涙が止まらない。色んなものに押し潰されそうだ。
いっそ押し潰して...
シゲside
もう何も考えられなかった。取材先では明るく振舞ったり、ポジティブな回答を心掛けたはずだった。
でもそこに残るのは俺の自責の念だけ。
周りから惜しかったですね。残念ですね。と声をかけられ続け、もう色々参ってしまった。
悔しい。辛い。苦しい。
しばらく、余白堂には行けない、な。
身勝手で、ごめん。A。
1度もお前なんて言ったことなかったのにっ...
それに言ってはいけない言葉まで浴びせてしまった。
「気持ち、大丈夫?」
「できることならスティードで」の一文。俺が父さんに送った一文。
「……大丈夫ですよ」
俺はこの父さんの言葉みたいにかっこいい気遣いもなにも出来なかった。
はあっ、辛い。
今後は全て仕事に力を入れることに決めた。
幸いほかの文学賞も、STORYも、舞台もある。
そこに力を尽くそう。
前に進もう。
…本当に、進めてる?
それだけは深く頭に残った。
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紫翠(プロフ) - 八百万さん» 八百万さん、コメントありがとうございますとても嬉しいです!!現在この作品の第2編(まっすー編)も連載中ですのでそちらもぜひお楽しみください! (2021年6月22日 21時) (レス) id: ea39d4d25c (このIDを非表示/違反報告)
八百万(プロフ) - 最初から一気読みしました!とても面白くて気づいたら読み終わってました!こんな面白い小説を読めてよかったです!ありがとうございます! (2021年6月22日 16時) (レス) id: 6b4fee2f31 (このIDを非表示/違反報告)
紫翠(プロフ) - momoさん» momoさん最後まで読んでくれてありがとうございました!こうやってコメント頂けて本当に嬉しいです(泣) 今後とも紫翠をよろしくお願いします!! (2021年4月20日 0時) (レス) id: ea39d4d25c (このIDを非表示/違反報告)
momo(プロフ) - 完結おめでとうございます!思いでの本屋さんは、更新されたら絶対に一番最初に読む!くらいな勢いで好きでした!(今もめっちゃ大好きです!)完結しましたが、また読み返します! (2021年4月19日 18時) (レス) id: a0b82fa00b (このIDを非表示/違反報告)
紫翠(プロフ) - momoさん» STORYも最高でしたね(涙) (2021年4月3日 19時) (レス) id: ea39d4d25c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紫翠 | 作成日時:2021年3月15日 0時