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西の空に日が落ちる頃。五条さんは任務があるからと席を立ち玄関へ足を向ける。Aはそれなら私もそろそろお暇を、と一緒に帰るようだった。
ドアを開け、Aが先に外に出る。
「じゃあね、伏黒くん。五条さんも色々ありがとうございました」
「何かあったら恵でも僕でも頼るんだよ」
「ありがとうございます」
そういってAは帰路に着く。五条さんは彼女の歩く後姿を見つめていた。
「恵、」
彼女の背中を見ながら、玄関先で立ち竦む五条さんは俺に小さく話しかける。おちゃらけた普段とは違う、真剣な目をしていた。
「Aのこと、気にかけてやれよ。今はまだ平気そうだけどあれはそのうち呪いに飲み込まれる」
ぴくり、と肩が1回揺れる。夕方、春の風が玄関先に吹き、髪を揺らした。
「呪いはAの心の中に蓄積されていく……。恵、もし怪しいと思ったらすぐに僕に連絡。いいね」
「……わかりました」
「ま、それはそれとして恵にお友達ができたってことだね」
「はぁ?」
五条さんは途端に普段の軽い雰囲気に戻り、手をヒラヒラとさせ足を進める。言いたいことは言えたようだ。
「恵は反抗期だからな〜!お友達って認めたくないのね!」
じゃあね!と五条さんは俺に背中を向けた。
夕日に照らされて白い髪はキラキラと光り、影は一際長く伸びている。ぼうとその後姿を眺めながら、頭には「呪いに飲み込まれる」そう告げた声が響いていた。
「気にかけろって、どうやって気にすんだよ」
独り言ちる言葉は空気に溶け込んだ。
そっと玄関のドアを閉める。
家の中には誰もいない。
『呪霊が、助かるなら』
馬鹿だと思う。呪霊さえ救おうとするその精神が。
『この世の呪いが少しは減るってことですよね』
善人であろうとするその精神が。
「偽善だ、そんなもの」
腹が立つ。自己犠牲の上に他者の幸せを見出すなど。
津美紀とは違う善人。いや、善人と言っていいのかも分からない。
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雛形(プロフ) - hiyoriさん» hiyoriさんコメントありがとうございます!凄いと言っていただけて本当に嬉しいです…!私の場合小説を作る時はテーマを決めて大体のプロットを立ててから書き始めています。1話1話はそれに沿うように勢いで書いて推敲して、というような感じですね! (2022年10月3日 8時) (レス) id: 75869cdb85 (このIDを非表示/違反報告)
hiyori - 凄いです😭 どうやって小説は作るんですか? (2022年10月2日 22時) (レス) @page5 id: 3185205e6c (このIDを非表示/違反報告)
雛形(プロフ) - アキさん» アキさんコメントありがとうございます!他の小説も読んでいただいた上にさらにコメントまで!本当にありがとうございます!嬉しすぎて転げ回ってしまいます…!不定期更新になりますがこれからも頑張りますね! (2022年9月30日 1時) (レス) @page29 id: 75869cdb85 (このIDを非表示/違反報告)
アキ(プロフ) - 主様の書く小説どれもドストライクすぎます😭💕💕 (2022年9月23日 1時) (レス) id: 011262e667 (このIDを非表示/違反報告)
雛形(プロフ) - 春雪さん» コメントありがとうございます。見直したのですが名前変換できない部分が分からず、念の為更新したのですが現在も変換出来ない様でしたらどの文章の所か教えて頂けますでしょうか…?本当に申し訳ありません💦 (2022年7月24日 23時) (レス) @page9 id: 75869cdb85 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雛形 | 作成日時:2022年1月26日 19時