偽善心中【伏黒恵】

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「お前、呪霊が見えて祓えるのか」

俺の質問にAは少し驚いた表情をする。

「じゅれい……？」

「知らないで祓ってたのか？お前がさっき消したやつは呪霊と言われる呪いだ」

「呪い……やっぱりそうなんだ。悪霊みたいなものだと思ってたから」

こいつ、術式を持ってるくせに知識はからっきしなのか。でも、さっきは俺の事。

「なんで俺が、見えて使えるやつだと分かった」

「伏黒くん、たまにその呪霊のほうを見てるから」

Aはちらりと玉犬に目を向ける。

「こいつは俺の式神だ」

「しきがみ、」

「呪いは呪いでしか祓えない。A、お前さっき呪霊を祓ったのか？」

玉犬を戻す。Aは先程呪霊が体に巻きついていた。それから何をする訳でもなく呪霊は光となって消えていった。今まで祓った呪霊の消え方とは違う。

「詳しいことはよく分からないよ。ただ、その呪霊っていわれるそれに触れると感覚を共有するの」

巻きついた呪霊が消えた時、Aは涙を流していたことを思い出す。

「感覚を共有？」

「伏黒くんはないんだね。上手く言えないんだけど、呪霊の気持ちが私に流れ込んでくるの。私がそれを感じ取ると呪霊は消えていく」

それじゃあ、さっき流していた涙は。

「お前…呪霊が呪霊足り得る、それをみるってことか…」

そう、と目の前のクラスメイトは薄く口角を上げる。
窓から差し込む光が逆光となってAの顔に影を差す。

それは、その術式は、余りにも救いがない。

日頃、AAがクラスメイトの便利な道具として使われている理由、きっとそれはただ断れないだけでは無いのだと気づいてしまった。Aの心は呪霊との共感で段々と歪んできてしまったものだと。

「ちっ……」

面倒臭いもんと遭遇してしまった。

頼るのは癪だが、こいつは知識もからっきしだし、このまま放っておいても俺がイラつく原因を片付けられる訳では無い。

しょうがない、五条さんに相談してみよう。
はぁ、とため息を一つ吐く。

「お前、これからちょっとうちに来い」

「え？」

「いーから、会わせたいやつがいる」

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