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教室に響く鐘は放課後を告げていた。
部活に行くもの、家に帰るもの、友人と会話をするもの。教室は賑やかなくらい音を立てる。
昨日からずっと、何もかも面白くなくて俺は早々に荷物を持って席を立った。
「Aさん、ちょっといいかな」
クラスメイトの女子数人がAの席を取り囲むように立ち並んで、話しかけている。ちらりと思わずそちらに視線を向けた。しかし女子に囲まれて、座っているAの姿は見えなかった。「あ、うん」という小さな声だけが耳に入る。大方、いつもの掃除やらノートやらを頼むものだと思っていた。だから俺は構わず、視線を戻して足を進めて教室を後にした。
。。。。
「伏黒君と付き合ってるって本当?」
目の前にはクラスのあまり話したことの無い女の子達。所謂クラスの中心的な人物。
放課後、図書室で本の続きを読もうと思って席を立とうとしたら女の子たちに囲まれた。掃除とか頼まれるのかと思っていたら「ちょっと来て」といつもとは違う発言で私は少し、嫌な予感がした。それはまさに。
「付き合ってないよ」
「……じゃあ好きなの?」
きっと、目の前の女の子は伏黒君の事が好きなんだろう。地味で、クラスの皆にいいように使われている私が昨日、伏黒君と一緒に帰ったことが彼女の耳に入ってきっと嫌な気持ちになったんだ。
「……好きじゃないよ」
好きじゃない。彼は確かにいい人だとは思う。ぶっきらぼうで怖いけれど、彼は真面目なんだと最近知った。それでも昨日のあの発言は、私と伏黒君の間の干渉出来ない壁を見せつけるようだった。
目の前の女の子は、私の発言を信じたのかは知らない。女の子たちはそれぞれ目を合わせていた。じゃあなんで一緒に帰ったんだとか、そんな何か言いたげな表情をしていたけれど。
目の前に立つ女の子は強い目で私を捉えた。
「私、伏黒君が好きだから。取らないでよ」
取るとか、取らないとか。きっと私と伏黒君はそういう関係になることは無い。反射的にうん、と小さく呟くと女の子たちはひそひそと何かを言いながら、私の前から居なくなった。
小さな呪霊が、ふわりと目の前を過ぎる。そっと指を伸ばした。ぱちんと弾けて光の粒が昇っていく。感じたはずの呪霊の感覚は一瞬だった、小さな呪い。
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雛形(プロフ) - hiyoriさん» hiyoriさんコメントありがとうございます!凄いと言っていただけて本当に嬉しいです…!私の場合小説を作る時はテーマを決めて大体のプロットを立ててから書き始めています。1話1話はそれに沿うように勢いで書いて推敲して、というような感じですね! (2022年10月3日 8時) (レス) id: 75869cdb85 (このIDを非表示/違反報告)
hiyori - 凄いです😭 どうやって小説は作るんですか? (2022年10月2日 22時) (レス) @page5 id: 3185205e6c (このIDを非表示/違反報告)
雛形(プロフ) - アキさん» アキさんコメントありがとうございます!他の小説も読んでいただいた上にさらにコメントまで!本当にありがとうございます!嬉しすぎて転げ回ってしまいます…!不定期更新になりますがこれからも頑張りますね! (2022年9月30日 1時) (レス) @page29 id: 75869cdb85 (このIDを非表示/違反報告)
アキ(プロフ) - 主様の書く小説どれもドストライクすぎます😭💕💕 (2022年9月23日 1時) (レス) id: 011262e667 (このIDを非表示/違反報告)
雛形(プロフ) - 春雪さん» コメントありがとうございます。見直したのですが名前変換できない部分が分からず、念の為更新したのですが現在も変換出来ない様でしたらどの文章の所か教えて頂けますでしょうか…?本当に申し訳ありません💦 (2022年7月24日 23時) (レス) @page9 id: 75869cdb85 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雛形 | 作成日時:2022年1月26日 19時