全てを捨てて、ここに来て (ページ36)

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nozomu▷▷

“ 小瀧くん ”

“ ごめんw 呼んでみただけw ”

…死んだかと思った。

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「望、もう遅いからAのこと送ってやって？」
「え、大丈夫だよ！」

『こんな時間っすよ？送らないわけないっす』

送る、大丈夫、の攻防戦を数回繰り返して
やっと折れたAさんが靴を履いている姿を後ろから見つめた。

「すみませんわざわざ…」

『あ、いえ！』

「照史、お邪魔しました！料理もリップもありがと」

「いーえ！また来てや」

『じゃあ…行きますか』

「はい」

まじで死んだかと思った。

淳太の所のバーで見かけた時もAさんは淡々とクールにお酒を飲んでいる感じで、

照史のレストランで偶然会った時もクールでかっこいい女の人って感じで、

今日だってそうだった。

俺はそんな姿か、俺に対して他人感全開の遠慮した顔しか見たことがなくて。

でもそんな彼女が、
年下の俺にも敬語を忘れない彼女が

タメ口でごめん、って
呼んでてみただけ、ってそう言って
ふわりと笑ったんだ。

頭の中で鐘が鳴ったとかそんな可愛いもんじゃなかった。

心臓の血管をキュッと摘まれたみたいに一瞬息が出来なくなって、息の仕方を忘れた。

息の仕方を思い出した時にはいつものAさんに戻っていたけれど。

『Aさんって、この時間でも1人でいつも帰るんすか？』

「そうですね、はい」

『危ないっすよ、ちゃんと送ってもらったりしないと』

「はは、私を狙う人はいないので大丈夫ですw」

いやいやいや、大丈夫なわけがない

こんな魅力的な人が、大丈夫なわけないやんか

『大丈夫やないですよ！夜ならいつでも暇なので連絡ください、迎えに行きますよ』

「いやいや、小瀧くんもバーの仕事があるし、ほら、お客さんが小瀧くんを待ってますよ」

“ 小瀧くん ”と呼ばれる度にキュッとなる心臓

『Aさんが心配でお客さんとちゃんと会話出来ないっすよ』

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