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『あの、』
「?」



小瀧さんと話すのも慣れてきた頃



『Aさん、って呼んでもいいですか?』



小瀧さんはそう言った。



「あ、はい…どうぞ」



グラスに口をつけながら答えるが
なんだろ、なんか…なんかくすぐったい



『淳太も照史も下の名前で呼んでるから、俺もいいかな…って思ったんすけど…』



嫌でした?、と心配そうな顔でこちらを見る小瀧さんは、完全に耳としっぽがしょんぼりした犬にしか見えない



「嫌じゃないですよ、好きなように呼んでください」



そう言うと、パッと顔が明るくなる

感情が顔に出やすいんだろう小瀧さんが、とても可愛かった



「じゃあAも呼び方決めたら?」

「へ?」



照史がそう言う



「えーっと…じゃあ…」





正直、呼び方を決めるのは何となく苦手だ。

照史って呼び方も、淳太って呼び方も、自分が「こうやって呼ぶ!」と決めたわけじゃないし、周りがそう呼んでいたから私もいつの間にか呼んでいただけ




「じゃあ…………小瀧?」

「ぶっww」

「え?」

「あっはは!そのままやん!w」

「え、だって名前小瀧さんでしょ?」

「望とか望くんとか色々あったやろ!w」




あかん、腹痛い〜なんて笑っている照史の言葉に納得した。

そっか、下の名前っていう選択肢もあったじゃん




『今すぐ決めなくていいですよ、Aさんの呼びやすいように呼んでください』

「あ、はい…なんかすいません…」




呼びやすいように……

呼びやすいように……





「……小瀧くん」

『はい!』

「小瀧くん、にする」

『ははw はい!Aさん』




小瀧くんかぁ〜、なんてたかが私の呼び方を噛み締めて嬉しそうな顔をするから




「小瀧くん」

『あ、はい!』

「ごめんw 呼んでみただけw」




柄にもなく無駄に呼んじゃったよ




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作者名:ash | 作成日時:2019年3月7日 23時

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