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「ごめん、トイレ行きたいから一瞬私の家行っていい?」
勝利「うん、もちろん」
とぼとぼ歩いている勝利は本当にテンションが下がっている。
たしかに、いつもなら「しょうがないよ!」って言える私でも今回ばかりはなぁ、しょうがなくない。
そう言えば、夏希に高校のキュンキュンエピソードを聞いたけどそんなことも忘れるくらい、私もテンパってしまっていた。
私の家に着いてアパートの階段を上がり、玄関の前に立つ。
勝利「ん?」
「どうした?」
勝利「あぁっ!?」
「え、なに!?」
勝利「これ!!!」
勝利が持ち上げたのは茶色の革財布。
勝利「あったぁ!」
「うぇ!?!?なんでここに!?!?」
勝利「わぁぁぁあ、よかったぁぁあ」
中身もちゃんと入っていて、問題なさそう。
「よかったね」
勝利「本当によかった…ありがとう
てか、ごめん・・・」
「いーよ別に、いつもお世話になってますから。
はい、休憩してかない?」
扉を開けて勝利を見ると、こくりと頷いた。
勝利「もう財布とか落としません」
「気をつけてね、私も気をつける」
紅茶が飲みたくなって台所に入ったのに、勝利もついてきた。
「どうしたの?」
勝利「あと、Aのことも、見失わないように気をつける」
「へ?」
手を止めて、勝利を見つめると、さっきの話を思い出して胸がドキドキしてきた。
勝利「知らない間に傷つけてた…から。
一番傷つけたくないのに。」
「う、うん、ありがとう・・・」
勝利「ちょっとだけ、こっち来てくんないかな?」
掠れるように小さな声が、そっと心臓にしみ入る。
勝利の前に立つと、たまにやるように、そっと私を抱きしめた。
でも、いつもよりきつく抱きしめられて、苦しかった。
「これってさ、」
勝利「ん?」
「たまにやるじゃん、勝利。
ありがとうとか言う代わりに」
勝利「うん。でも、今日はちょっと違うかも。」
「そうなの?」
勝利「ドキドキしてるの、分かるでしょ?」
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作者名:みよ | 作成日時:2019年2月3日 14時