幸せの伝染病【nkm】 ページ44
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確かに、ぷつんと自分の中で何かが切れる音を聞いた。
それは生きる気力だったかもしれないし、明日への希望だったかもしれない。ただ途端に、全てがどうでも良くなったのだ。
駅のホームにアナウンスが流れた。
飛び込みが1番お金がかかる、なんて話も聞く。これできっと毒親だった父と母にも迷惑を掛けられるし、もしかしたら会社の実態も明るみに出るかもしれない。願ったり叶ったりだ。
幸いホーム内に人はおらず、止められる心配もなさそうだった。
嬉しいのか虚しいのか乾いた笑いをこぼし、ふらりと点字ブロックを踏む。
少しずつ大きくなる電車の音を聞いても、何の感情も湧かなかった。あと少し。あと少しで、全部終わる。これで楽に_________
「ちょっ…！なにしてるんですか！！」
……なれなかった。
強く手を引かれた勢いで後ろに尻もちを着いたまま、何事もなく停車する電車を眺める。
顔を見る為に後ろを振り向くと、茶髪の若い男が同じように尻もちを着いていた。
「…なんで」
「なんでって、人が死のうとしてたら普通止めるでしょ…！」
間に合ってよかった、と心底安堵した表情で息を吐く男は、おそらく私よりも歳下だろう。
きっと楽しく生きている方の人間だ、と決めつけてしまうのは違うと分かっているけど、でも。
…やっと、楽になれると思ったのに。
「……じゃあ、あなたが殺してくれるの？」
「…えっ？」
「生きてたって誰も認めてくれないくせに、なんで死ぬのすら許してくれないの…？」
地面に座り込む私達を怪訝な顔をして横目で見ながら、降りてきた人達が通り過ぎていく。
それはそうだ。年甲斐もなく泣いているスーツ姿の女と、それを見ている男。明らかにおかしい。
しかし彼はそんな事を気にしている様子もなく私へ近付いてくる。
発車した電車にふと顔を上げると、目の前にあった輝きを携えた瞳と、目が合った。
「じゃあ、俺の為に生きてくださいよ」
「……は、」
「俺が認めてあげます。辛い事があるなら、それから逃げる手伝いもします。だから」
まだ、生きててください。
私の手を引いて彼は立ち上がる。とりあえずタクシーで…と呟くその顔を見上げていると、彼はまるで陽だまりのような笑顔を浮かべた。
こうなりたい。笑いたい。彼みたいに。
…そうか、私は死にたかったんじゃない。
「ほら。まずは立ち上がらなきゃ、ね？」
人の手が、声が、こんなにもあたたかいこと。私は初めて、それが幸せだと知った。
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まめこ(プロフ) - 陰キャ寄りの陽キャさん» まさか、コメント頂けるの本当に嬉しいので、ぜひたくさん書き込んでやってください…！嬉しいお言葉ありがとうございます、頑張ります！！ (2021年6月25日 23時) (
レス) id: 17312d353f (このIDを非表示/違反報告)
まめこ(プロフ) - ゆうさん» ありがとうございます嬉しいです…！！もちろん大丈夫ですよ、いつでもお待ちしてます！ (2021年6月25日 23時) (レス) id: 17312d353f (このIDを非表示/違反報告)
陰キャ寄りの陽キャ(プロフ) - まめこさん» 教えて下さりありがとうございます！逆にコメントしすぎて迷惑ちゃうかなって思いました…すみません。これから応援してます!!大好きー！ (2021年6月24日 23時) (レス) id: fe4eb2c8c6 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - まめこさん» 最っっっっっっっっっ高でした!!!!!!!!まじで…もう！なんかこう…！（語彙力低下）本当にありがとうございました！！！（またリクエストいいかな…） (2021年6月24日 23時) (レス) id: 2c4cc0fb10 (このIDを非表示/違反報告)
まめこ(プロフ) - ゆうさん» そう言っていただけてとても嬉しいです…コメントありがとうございます。リクエスト承りました！必ず書かせて頂きます！ (2021年6月20日 16時) (レス) id: 17312d353f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まめこ
| 作成日時：2020年11月10日 0時
