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その悪魔の言葉に大人しく腰を上げようとしたのは、私だけだった。
隣を見ればムッとした表情のNakamuが、不満を隠そうともせずにBroooockと呼ばれた悪魔を見上げていた。
「…先にいたのは俺達なのに、なんで出ていかなきゃいけないの？」
「別にNakamuに言ってるんじゃないって。僕はその人間に言ってるの」
「は？Aが出て行ったら俺がAとお話できないじゃん」
「……そんなの他の場所でやればいい話でしょ。僕は今すぐ、ここで、寝たいわけ」
理解出来る？と挑発的に首を傾げる悪魔に、Nakamuの目が据わる。
先程楽しそうにこの悪魔の名を呼んでいたのが、少し会話を交わしただけでこれだ。
原因は間違いなく私にあるのだけど、Nakamuが場所を譲ればそれで済む話だろう。否、それが出来ないのが悪魔という生き物、という事か。
「…Nakamu、他の場所で話そう、ね？」
「……やだ」
教会で一緒に過ごしていた小さな子供達の喧嘩を宥めていた時のことを思い出し、少しだけ力が抜けた。
この子供のような言動や垣間見える幼さは、もしかすると彼が海洋の象徴として産み落とされてから、彼にとっての"年長者"と関わる機会が無かったが故なのかもしれない。
まあ、包み隠さず嫌悪をぶつけられるよりはずっと扱い易くて助かるし、Nakamuだけでもこのまま私にあからさまな敵対心を向けてこない悪魔がいれば、私もこの場所で命を落とす事はないだろう。
長身の悪魔は相変わらず虫の居所が悪そうだが、しかしNakamuの視線に狼狽える様子はなかった。
この程度の喧嘩ならば彼らの中ではよくある事なのか、それともNakamuの駄々が珍しい事ではないのか。それは分からないが、兎に角この場から去らない事にはどうしようもない。
「…勝手に入ってきた挙句、場所を取ってしまってごめんなさい。すぐに出て行くから」
「……ふーん。案外賢いんだね、やっぱり強い聖職者だから？」
「…貴方達には到底及ばないけどね」
少し、ほんの少しだけ悪魔の表情が和らぐ。これ以上機嫌を損ねてしまわないうちに部屋を出よう、とソファから立ち上がり、私はNakamuへ向き直った。
「……なんで？」
あぁ、失念していた。
何故私は、少しでも心を許してしまったのだろうか。
「なんで、俺じゃなくてBroooockの言う事聞くの？」
________彼だって、【嫉妬】という大罪を司る、大悪魔だというのに。
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クリパ好き - 神…() (2022年11月11日 10時) (
レス) @page48 id: cf4801f795 (このIDを非表示/違反報告)
😊 - カッコよかったぜ！どんどん登場人物の考え方が変わっていくのがなんか綺麗で自然でなんかすごかった()完結寂しいけどおめでとう！ (2022年9月3日 2時) (レス) @page48 id: 9df188f843 (このIDを非表示/違反報告)
Bearl - 完結おめでとうございます！それぞれの登場人物の描写が細かくって、読んでいてとても楽しかったです！小説の更新、お疲れ様でした！ (2022年8月26日 10時) (レス) @page48 id: cd9603c5df (このIDを非表示/違反報告)
まめこ(プロフ) - あいすすすさん» わ、気付いていただけて嬉しいです〜！！よろしければもう少々お付き合い下さい☺️ (2022年8月25日 16時) (レス) id: 17312d353f (このIDを非表示/違反報告)
あいすすす - 七つの大罪や美徳が好きなのでわくわくしながら読み進めていたら、夢主ちゃんの救恤と強欲の悪魔が館に存在しなかったのがここに絡んでくるとは！とても面白くて毎度楽しみにしています。これからも楽しみにしています！ (2022年7月17日 8時) (レス) @page40 id: 8404f46a69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まめこ
| 作成日時：2022年5月24日 20時
