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「…ふぁ」
堪えきれずこぼれた欠伸を隠す事もせず、椅子に姿勢悪く背中を預ける。
再び屋敷に戻ってくると、Broooockはお馴染みとなった談話室のソファで眠ってしまい、シャークんときんときはいつの間にかどこかへ消えてしまっていた。
きりやんとNakamuの声と、時たまに会話に混ざるスマイルの声をぼんやりと耳に入れながら、私はテーブルの上を眺める。
____________愛する者よ、自ら復讐するな、ただ神の怒りに任せまつれ。
悪人を悪で報いてはならない。悪人への復讐は、神が行うものである。
そう説いた聖書、否、神の言葉も今は到底理解し難い。
神から制裁を与えられるだけならばそれは復讐ではなくただの"罰"だ。復讐は自らの手で行ってこそ、同じ苦しみを与えてこそだと言うのに。
「A、眠いなら寝てていいよ。疲れたでしょ」
「…ん、でも……」
「2人も暫く戻って来ないだろうしさ、ね」
いつの間にそばに来たのだろうか。私の隣に立ったNakamuが、その丸い瞳で私の顔を覗き込んだ。
更に立ち上がりこちらへ来たきりやんが、私の頭にぽんと手を乗せそのままソファの方へ歩いていく。
「Broooock起こすからソファで寝なよ。あ、別に部屋でもいいけど」
「……ソファがいい」
「そう言うと思った。おいBroooock、起きろ」
お前は床でも寝れるだろと酷い言い草で起こされるBroooockの唸り声に少し申し訳なくなるが、また料理を振る舞えば許してくれるだろうか。
そんなことを考えながら立ち上がり、ふとBroooockを見て思い出す。
「…ねえ、Broooock」
「んぇ…なぁにA…」
「……お願い、思いついたよ」
いつかに、彼に問われて答えられなかったもの。
願いも欲も捨てたあの時の私には、確かに何もなかった。思えば信仰を纏っただけの空っぽな人間だったのだろう。
きりやんに叩き起され不服そうだったBroooockが、その眠そうな目を瞬かせる。
「…皆で、ご飯が食べたい」
私が作った料理を、皆で。
普通の家族みたいに、昔、お父さんとお母さんと食べたみたいに。
「ふふ、勿論。毎日でも叶えてあげるよ」
そんな声を聞きながら、ソファに寝そべり目を瞑る。甘いものがいい!という楽しそうな声はNakamuで、飯だって言ってんだろと呆れたようにこぼすのはスマイルだろうか。
「……やくそく、だからね…」
今日は、何だか良い夢が見られそうだ。
眠気に呑まれながらぼんやりとそんな事を考えていた。
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クリパ好き - 神…() (2022年11月11日 10時) (レス) @page48 id: cf4801f795 (このIDを非表示/違反報告)
😊 - カッコよかったぜ!どんどん登場人物の考え方が変わっていくのがなんか綺麗で自然でなんかすごかった()完結寂しいけどおめでとう! (2022年9月3日 2時) (レス) @page48 id: 9df188f843 (このIDを非表示/違反報告)
Bearl - 完結おめでとうございます!それぞれの登場人物の描写が細かくって、読んでいてとても楽しかったです!小説の更新、お疲れ様でした! (2022年8月26日 10時) (レス) @page48 id: cd9603c5df (このIDを非表示/違反報告)
まめこ(プロフ) - あいすすすさん» わ、気付いていただけて嬉しいです〜!!よろしければもう少々お付き合い下さい☺️ (2022年8月25日 16時) (レス) id: 17312d353f (このIDを非表示/違反報告)
あいすすす - 七つの大罪や美徳が好きなのでわくわくしながら読み進めていたら、夢主ちゃんの救恤と強欲の悪魔が館に存在しなかったのがここに絡んでくるとは!とても面白くて毎度楽しみにしています。これからも楽しみにしています! (2022年7月17日 8時) (レス) @page40 id: 8404f46a69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まめこ | 作成日時:2022年5月24日 20時