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「あ〜美味しかった!」
「A、ずっと屋根の上に居たの?」
「うん、ここで皆が暴れてるの見てた」

ご機嫌なきりやんの隣で首を傾げたきんときに頷く。先に戻ってきていたシャークんとNakamuも久しぶりの食事に満足した様子で、悪魔らしからぬ笑顔を浮かべていた。
その後戻ってきたBroooockはスマイルの隣で眠り始め、そして最後にきりやんときんときが戻ってきた。この様子を見るに、2人は残飯処理と言ったところだろうか。

「おいBroooock、帰るぞ」
「……ん〜…もう…?」
「だからここで寝るなって言ったのに…ほら、寝るなら帰ってからにしろ」

スマイルに腕を引っ張り上げられながら渋々起き上がるBroooockを一瞥し、私は変わり果てたその景色を見下ろす。
誰一人助かる事はなく、余すことなく喰い尽くされた街。暗がりの中でごろごろと死体が転がるばかりのその光景に何の感情も抱かなくなってしまった自身に、少し驚いた。


「A」
「きんとき。どうしたの?」
「いや、下ばっかり見てるから気になるのかなって思って」

嫌なら着いて来なくてもいいんだよ、という優しい言葉に首を振り、私はその景色から目を逸らす。

「…嫌じゃないけど…ただ、今までなら私がどうにかして弔ってあげなきゃって思ってただろうなって」
「……聖職者だったらって事?」
「そう。可笑しいよね、この人達の魂はもう何処にもないのに」

悪魔に魂を喰われた人間は、天に昇る事も次の人生を授かる事も出来ない。死体は、もうただの容れ物と同じだ。
確かに、ときんときは私の言葉に笑うと、ちらりとNakamu達の方を見遣る。
談笑しじゃれるその姿を見ると、やはりただ利害が一致した為に同じ場所に留まる事を選んだようには思えないが__________仲が良いなんて言えばきっと否定されるだけだろう。


「ま、弔いならきりやんがやってくれるから大丈夫だよ」
「…燃やすだけは弔いって言わないよ」
「はは、だって魂のない体を放っておいたって仕方ないでしょ」

土に埋められるのとどっちが苦しいんだろうね、と笑みをこぼすきんときは、どれだけ穏やかな声や表情をしていてもやはり悪魔だ。
どっちもどっちだと思うよとつまらない返事を返し、私はふと夜空を見上げる。

通りで今夜は光がない訳だ。晴れた夜の空に、月の姿は何処にも見当たらなかった。

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クリパ好き - 神…() (2022年11月11日 10時) (レス) @page48 id: cf4801f795 (このIDを非表示/違反報告)
😊 - カッコよかったぜ!どんどん登場人物の考え方が変わっていくのがなんか綺麗で自然でなんかすごかった()完結寂しいけどおめでとう! (2022年9月3日 2時) (レス) @page48 id: 9df188f843 (このIDを非表示/違反報告)
Bearl - 完結おめでとうございます!それぞれの登場人物の描写が細かくって、読んでいてとても楽しかったです!小説の更新、お疲れ様でした! (2022年8月26日 10時) (レス) @page48 id: cd9603c5df (このIDを非表示/違反報告)
まめこ(プロフ) - あいすすすさん» わ、気付いていただけて嬉しいです〜!!よろしければもう少々お付き合い下さい☺️ (2022年8月25日 16時) (レス) id: 17312d353f (このIDを非表示/違反報告)
あいすすす - 七つの大罪や美徳が好きなのでわくわくしながら読み進めていたら、夢主ちゃんの救恤と強欲の悪魔が館に存在しなかったのがここに絡んでくるとは!とても面白くて毎度楽しみにしています。これからも楽しみにしています! (2022年7月17日 8時) (レス) @page40 id: 8404f46a69 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まめこ | 作成日時:2022年5月24日 20時

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