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I'm not the messiah. ページ41

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空に届きそうなほど高く上がる炎を見上げ目を瞬かせる。

ひとつ指を鳴らしただけで瞬く間に教会を包み込んだこの炎はきりやんの魔術だった。
ぱちぱちと舞う火の粉はあの日見たものと同じである筈なのに、何故かとても綺麗に思える。


「言っただろ、俺の炎はどんなものでも燃やせるって」
「うん…凄いね」
「でしょ。まあ、中の奴は死なない程度にしてやってるから…今頃苦しんでるんじゃない?」

あ〜可哀想、と感情の籠らない呟きを落とし、きりやんは私の頭上でケラケラと笑う。
教会はレンガ造りである筈だが、彼の放った炎はまるで油を注ぎ続けているかのような勢いである。余程この状況が楽しいのか随分と上機嫌な彼は、そのうち跡形もなく燃えて消えるよ、と無慈悲に目を細めた。


「うーわ、派手にやってんな」
「あれ、シャークん。もう見つけたの」

ぱっと突然私の隣に姿を現したのは緑眼の彼だ。
炎に包まれた教会を見てこちらもまた楽しそうに笑うと、彼はきりやんの問いかけに小さく頷いた。

「…あったよ、骨。結構遠くに埋められてた」
「……そっか、やっぱり」

やっぱりそうだったんだ、と呟く私に、2人は顔を見合わせて少し困ったような表情を浮かべる。
どう声をかけるべきか迷っているのだろう。そんな彼らが薄っぺらい慰めの言葉を口に出すより前に、私は隣で宙に浮いたままのシャークんを見上げた。

「私も行く。連れて行って」
「え、行くの…大丈夫?」
「…平気。ちゃんと見届けてあげなくちゃ…あの子達も救われないでしょ」

教会で育てられていた、私と同じ孤児の子供達。
里親に引き取られて姿を見なくなる度、誰よりもあの子たちの幸せを願ったのはきっと私だ。

「……それに、助けられなかったのは私だから」

優しい里親に恵まれて、大切に育てられているのだろうと信じていた。
そんなあの子達の平穏の為にも私が悪魔を封じ続けなければと、そう思っていた。


___________神父の部屋で、地獄の日々が綴られた日記を見つけるまでは。

*→←*



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クリパ好き - 神…() (2022年11月11日 10時) (レス) @page48 id: cf4801f795 (このIDを非表示/違反報告)
😊 - カッコよかったぜ!どんどん登場人物の考え方が変わっていくのがなんか綺麗で自然でなんかすごかった()完結寂しいけどおめでとう! (2022年9月3日 2時) (レス) @page48 id: 9df188f843 (このIDを非表示/違反報告)
Bearl - 完結おめでとうございます!それぞれの登場人物の描写が細かくって、読んでいてとても楽しかったです!小説の更新、お疲れ様でした! (2022年8月26日 10時) (レス) @page48 id: cd9603c5df (このIDを非表示/違反報告)
まめこ(プロフ) - あいすすすさん» わ、気付いていただけて嬉しいです〜!!よろしければもう少々お付き合い下さい☺️ (2022年8月25日 16時) (レス) id: 17312d353f (このIDを非表示/違反報告)
あいすすす - 七つの大罪や美徳が好きなのでわくわくしながら読み進めていたら、夢主ちゃんの救恤と強欲の悪魔が館に存在しなかったのがここに絡んでくるとは!とても面白くて毎度楽しみにしています。これからも楽しみにしています! (2022年7月17日 8時) (レス) @page40 id: 8404f46a69 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まめこ | 作成日時:2022年5月24日 20時

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