Devils. ページ5
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「…サタンと、ルシファー…?」
確かに力の強い悪魔だとは聞いていた。事実、あのような広範囲に、かつ屋敷を隠す魔術と森の幻覚を見せる魔術というような複数の魔術を使える悪魔はそうそう居るものではない。
ただそれが、"7つの大罪"を司る悪魔だとするなら、話は別である。
彼ら、或いは彼女らはとてつもなく強い魔力を持ち、おそらくその力が集まれば人間を滅ぼす事だって造作もないだろう。
そうしないのは、悪魔が人間の悪の心に付け込み、魂を喰らう存在であるから。
それだけなのだ。力を持った悪魔にとって、人間の存在とはその程度のもの、それ以上でも以下でもない。
しかし、それならば何故、なんの情報も伝えられていないのか。何故何も知らされず、私一人がここへ向かわされたのか。
まさか、誰も気が付かなかったと言うのか。
ここに巣食う悪魔が、かの大罪を背負う悪魔であると。
「あはは!びっくりした顔してるね」
「…当たり前でしょ、まさかこんな…」
この悪魔の言う事が本当なら、この屋敷に棲む悪魔を1人で封じようなど、とんだ思い上がりだ。
少なくとも、今の時点では3体。悪魔に誰かを敬う心があるとは思えないが、先程の口ぶりから考えるとおそらく、この悪魔も7つの大罪のうちどれかを司っているのだろう。
焦りで上手く頭が回らない。
そんな私を悪魔は全て見透かしているかのような瞳でじっと見つめ、口角を上げた。
「…分かった?今君がどこにいて、どういう状況に置かれてるのか」
笑みを貼り付けたまま、悪魔はそう言ってゆらりと尻尾を揺らす。
黒く細いそれを目で追いながら、気持ちを落ち着かせようと息を吐き出した。
「…それで、私はどうすれば?」
手に持っていた短剣をゆっくりと鞘へ仕舞い、悪魔を見据える。
悪魔はきょとんとした顔で目を瞬かせると、絶やさなかった笑みをふっと消した。
冷酷に輝く金の瞳に映るのは、果たして人間としての私か。はたまた、食糧としての私か。
「…うーん、じゃあさ」
一瞬だった。少し視線を逸らした隙に、いつの間にか悪魔は私の目の前にまで迫っていて。
舌なめずりをして目を細めるその表情が、実に悪魔らしいと思った。
「食べたいって言ったら、食べさせてくれんの?」
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クリパ好き - 神…() (2022年11月11日 10時) (レス) @page48 id: cf4801f795 (このIDを非表示/違反報告)
😊 - カッコよかったぜ!どんどん登場人物の考え方が変わっていくのがなんか綺麗で自然でなんかすごかった()完結寂しいけどおめでとう! (2022年9月3日 2時) (レス) @page48 id: 9df188f843 (このIDを非表示/違反報告)
Bearl - 完結おめでとうございます!それぞれの登場人物の描写が細かくって、読んでいてとても楽しかったです!小説の更新、お疲れ様でした! (2022年8月26日 10時) (レス) @page48 id: cd9603c5df (このIDを非表示/違反報告)
まめこ(プロフ) - あいすすすさん» わ、気付いていただけて嬉しいです〜!!よろしければもう少々お付き合い下さい☺️ (2022年8月25日 16時) (レス) id: 17312d353f (このIDを非表示/違反報告)
あいすすす - 七つの大罪や美徳が好きなのでわくわくしながら読み進めていたら、夢主ちゃんの救恤と強欲の悪魔が館に存在しなかったのがここに絡んでくるとは!とても面白くて毎度楽しみにしています。これからも楽しみにしています! (2022年7月17日 8時) (レス) @page40 id: 8404f46a69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まめこ | 作成日時:2022年5月24日 20時