Truth. ページ37
.
森を抜け向かった教会は、私が洋館へ赴く前と何ら変わりなかった。
まるで私の帰りを祝福するかのような快晴の空に見守られながらぐるりと辺りを見渡し、澄んだ空気を吸い込む。
あの場所がどれだけ強い魔力に満ちていたのかを改めて実感しながら、私はいつものように整備された道を進み、馴染んだその大きな扉へ手を掛けた。
扉は随分と古くなっており建付けが悪い。いつか直して貰おうと貯めておいたお金の使い所はなくなってしまったし、こんな事なら自分の為に使っていればよかった。
ギイ、と音を立てて扉を押した。
開いた先はすぐに聖堂となっており、ステンドグラスから透ける光に私は思わず目を細めた。
白を基調とした綺麗な聖堂だ。決して大きくはないが、毎日信徒が訪ねてきては祈りを捧げていた。
今はどうやら、1人だけのようだが。
「…A？」
「……はい。只今戻りました、お父様」
扉を開く音に振り向いたのは、大好きな父だった。会衆席に腰掛けた彼はすぐに立ち上がると、そう言って笑んだ私の元へ早足で近付いてきた。
「…そうか、そうか。悪魔を封じて、戻ってきたのだな」
私の手を取り笑う父の、なんと嬉しそうな事か。
口元に浮かべた笑みは崩さぬまま、私は否定するでも肯定するでもなくやんわりと父の手を解いた。
あの日から、一度も離した事はなかった。救ってくださった父の役に立ちたくて、人々を救う事で認めて貰いたくて。
「……A？」
父が訝しげに私の名を呼ぶ。
どうかしたのか、という問いが余りにも馬鹿馬鹿しくて仕方なかった。
「…ふふ、いいえ。ただ_________ 」
「やっぱり、心配の言葉はかけてくださらないんだなぁと思って」
にこりと笑んだ私に、流石に何かおかしいと気が付いたのだろうか。父は再び私の手を取ると、片手でロザリオを握り締め口を開く。
「まさか、悪魔に取り憑かれて……」
「あはは！酷い、人を悪魔呼ばわりなんて」
父の手に握られたロザリオの輪状の部分を掴み、勢い良く手を引く。
ぶちんと音を立てて千切れ勢い良く辺りの床に珠を散らすそれをゆっくりと目で追い、私は呆気に取られる父を_________否、父だった人を見据えた。
「…悪魔は貴方でしょう、お父様？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 598人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
クリパ好き - 神…() (2022年11月11日 10時) (
レス) @page48 id: cf4801f795 (このIDを非表示/違反報告)
😊 - カッコよかったぜ！どんどん登場人物の考え方が変わっていくのがなんか綺麗で自然でなんかすごかった()完結寂しいけどおめでとう！ (2022年9月3日 2時) (レス) @page48 id: 9df188f843 (このIDを非表示/違反報告)
Bearl - 完結おめでとうございます！それぞれの登場人物の描写が細かくって、読んでいてとても楽しかったです！小説の更新、お疲れ様でした！ (2022年8月26日 10時) (レス) @page48 id: cd9603c5df (このIDを非表示/違反報告)
まめこ(プロフ) - あいすすすさん» わ、気付いていただけて嬉しいです〜！！よろしければもう少々お付き合い下さい☺️ (2022年8月25日 16時) (レス) id: 17312d353f (このIDを非表示/違反報告)
あいすすす - 七つの大罪や美徳が好きなのでわくわくしながら読み進めていたら、夢主ちゃんの救恤と強欲の悪魔が館に存在しなかったのがここに絡んでくるとは！とても面白くて毎度楽しみにしています。これからも楽しみにしています！ (2022年7月17日 8時) (レス) @page40 id: 8404f46a69 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まめこ
| 作成日時：2022年5月24日 20時
