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あの日私を拾い教会へ連れ帰ってくれた、血の繋がりのない、父。
今よりも少し若い姿の彼は父を見つけにこやかに歩いて来ると、そのまま穏やかな様子で話をしだした。
後ろを向いた父の表情は分からないが、父は神父様の話に相槌すら打たない。
話し声は聞こえないが、良い話をしている訳ではない事だけはよく分かった。
「ふざけないでください、何度言われようが貴方に娘は渡さない！」
ぼうっとその後ろ姿を見つめていると、突然父が半ば叫ぶように声を上げた。
悪い事をした私を怒るのはいつも母で、父はそんな私を諭すだけだった。そんな優しい父が声を荒らげるのを見るのは初めてで、もう10年以上経っているにも関わらず驚いてしまう。
お引き取り下さい、と父が厳しい声で続ける。
神父様はそんな父を見ても穏やかな表情を浮かべたまま、一礼をして踵を返した。その先にあるのは教会へ続く道である。やはり私が知るお父様で間違いないと確信していると、表情の見えなかった父が振り向いた。
そこに滲む深い怒りが分からない程、私も子供ではない。
何らかの理由で私を欲している神父様と、そんな私を守ろうとする父。きっと母もこの事を知っていて、私と神父様の接触を極力避けようとしているのだと思った。
ぷつりと情景が途切れ、暗闇が訪れる。
しかしスマイルから目を開けていいとの指示はなく、術が解けた気配もなかった。
まだ続きがあるのだろうかとそのまま待っていると、ゆっくりと目の前の色が変わる。
そこは、先程と同じ私の村。
ただ1つ違うのは、村の人々の姿が何処にも見当たらない点だろう。
声を掛けられないもどかしさに耐えながらじっとその光景を見守っていた、その時だった。
音もなく民家のひとつに炎が舞ったのだ。
瞬く間に風に民家を包み込んでいくと、炎は隣の民家へとすぐに燃え移っていく。人の声はなく、辺りにはただ炎が木造の家を燃料に燃え盛る音だけが響いていた。
スマイルは、どういう気持ちでこれを傍観していたのだろう。天使としての慈悲が少しでも残っていたのなら___________いや。あの日の惨劇を悪魔である彼に防いでもらおうなど、とんだお門違いだ。
分かっている、分かっているけど。
火の粉が舞う。家の壁が燃え、焼け落ちていく。
そんなあの日の光景に、堪らず目を瞑りたくなった。
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クリパ好き - 神…() (2022年11月11日 10時) (
レス) @page48 id: cf4801f795 (このIDを非表示/違反報告)
😊 - カッコよかったぜ！どんどん登場人物の考え方が変わっていくのがなんか綺麗で自然でなんかすごかった()完結寂しいけどおめでとう！ (2022年9月3日 2時) (レス) @page48 id: 9df188f843 (このIDを非表示/違反報告)
Bearl - 完結おめでとうございます！それぞれの登場人物の描写が細かくって、読んでいてとても楽しかったです！小説の更新、お疲れ様でした！ (2022年8月26日 10時) (レス) @page48 id: cd9603c5df (このIDを非表示/違反報告)
まめこ(プロフ) - あいすすすさん» わ、気付いていただけて嬉しいです〜！！よろしければもう少々お付き合い下さい☺️ (2022年8月25日 16時) (レス) id: 17312d353f (このIDを非表示/違反報告)
あいすすす - 七つの大罪や美徳が好きなのでわくわくしながら読み進めていたら、夢主ちゃんの救恤と強欲の悪魔が館に存在しなかったのがここに絡んでくるとは！とても面白くて毎度楽しみにしています。これからも楽しみにしています！ (2022年7月17日 8時) (レス) @page40 id: 8404f46a69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まめこ
| 作成日時：2022年5月24日 20時
