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一通り私にじゃれついて満足したのか、はたまたご主人を探しに行ったのか。突然廊下を駆け出してしまったスマイヌを見送り、私は金髪の悪魔_________きりやんへ向き直る。
対峙した時のような敵意は感じられないので、おそらく攻撃の意思はないのだろう。
彼は視線に気が付くとちらりと私を見てまた目を逸らす。
「…まだ私のこと食べる気?」
「いや?シャークんにもスマイルにも止められたし、そんな事したらNakamuもまたキレるだろ」
それによく見たら不味そうだし、と余計な一言をつけ加える彼を睨むも、特に効果はなさそうである。彼は飄々とした顔で再び私を見下ろすと、私の部屋がある、つまり談話室へ続く方の廊下を指さした。
「A、料理出来るんでしょ?なんか作ってよ」
「…人間の食べ物、食べられるの?」
「俺はね。Broooockときんとき以外は食べた事もないと思うけど」
食堂あっちだよ、と有無を言わさず歩き出したきりやんの背中を追い、隣を歩く。
エントランスで対峙した時よりも雰囲気が柔らかいのは、スマイルかシャークんが上手く諭してくれたおかげだろうか。それとも、ただ食事が楽しみなだけなのか。
やはり、悪魔の考えている事は私には理解し難い。
「…ねえ、でもこっち、談話室の方だよね」
「うん、そうだけど」
「……大丈夫かな、Nakamu達にうっかり会っちゃったら」
あぁ、ときりやんが頷く。どうやらあの2体の喧嘩の話は耳に入っていたようで、まあ災難だったなと哀れむような視線を向けられた。
「大丈夫だろ。Nakamuにはきんときがついてるし、Broooockは普通に落ち着いてたし」
「…なら、いいんだけど」
「彼奴らがああなのはいつもの事だから。会ったらテキトーにあしらっとけばいいよ」
その適当なあしらいが効かないから、困っているのだけれど。深い溜息を吐いた私に、きりやんは実に楽しそうに笑い声を上げた。
「……そう言えば、」
「んあ?」
「なんで私の名前を知ってるの?」
「あー、スマイルに聞いた」
腹減ったなぁ、と緊張感のない彼の声がぼやく。
医者のような羽織り_______この場合は白衣ではなく黒衣と呼ぶのだろうか。この辺りでは見ない変わった衣服に身を包んだ彼が揺らす黒く細い尻尾を、足を進めながらぼんやりと眺めていた。
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正直どうしてもスマイヌが出したかっただけの回でした
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クリパ好き - 神…() (2022年11月11日 10時) (レス) @page48 id: cf4801f795 (このIDを非表示/違反報告)
😊 - カッコよかったぜ!どんどん登場人物の考え方が変わっていくのがなんか綺麗で自然でなんかすごかった()完結寂しいけどおめでとう! (2022年9月3日 2時) (レス) @page48 id: 9df188f843 (このIDを非表示/違反報告)
Bearl - 完結おめでとうございます!それぞれの登場人物の描写が細かくって、読んでいてとても楽しかったです!小説の更新、お疲れ様でした! (2022年8月26日 10時) (レス) @page48 id: cd9603c5df (このIDを非表示/違反報告)
まめこ(プロフ) - あいすすすさん» わ、気付いていただけて嬉しいです〜!!よろしければもう少々お付き合い下さい☺️ (2022年8月25日 16時) (レス) id: 17312d353f (このIDを非表示/違反報告)
あいすすす - 七つの大罪や美徳が好きなのでわくわくしながら読み進めていたら、夢主ちゃんの救恤と強欲の悪魔が館に存在しなかったのがここに絡んでくるとは!とても面白くて毎度楽しみにしています。これからも楽しみにしています! (2022年7月17日 8時) (レス) @page40 id: 8404f46a69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まめこ | 作成日時:2022年5月24日 20時