嘘つき【br】 ページ38
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ただの友達、のはずだったのだ。
男女の友情は当たり前に成立すると思っていたし、事実今までずっと成立していて、私と彼の間にあったのは確かに友情"だけ"だった。
「A、何してるの?」
「なにって勉強でしょ」
「…明日槍降るんじゃね、もしかして」
「失礼な」
私だって好きじゃないだけで勉強はするよ、と彼を睨み上げ、再びノートへ視線を戻した。
だから先帰ってていいよと言えば彼は少し不服そうにえ〜と声を漏らす。ほら、それ。
「じゃあ僕も残る」
「…え、なんで?いいよ先帰って」
「いいから残るの!1人で帰ってもつまんないし」
いつもの友達と帰れば良かったじゃん、という可愛くない言葉はぐっと飲み込み、ふーん、となんでもないを装って適当に返事をする。
せっかく日直の仕事を手伝う為に残ってくれていた彼に、きっとこの言葉は適切ではない。それに変なところで強情な彼にはこれ以上何を言っても無駄だろう。
諦めてため息を吐くと、彼が嬉しそうに隣の席に座ってこちらに椅子を寄せる。
暫くは大人しく私のノートを見つめていたが、早々に飽きたのか少しすると私の長い髪の毛を持ち上げくるくると弄り始めた。
彼は暇になるといつもこうして私の髪の毛で遊び出す。今に始まった事ではないし異様に近い距離に言及する事もなかった。
しかしまあ、抱く感情が違えばもちろん対応も変わってくるわけで。
「…やっぱ帰る」
「え?」
「Broooockつまんなそうだもん。早く帰ろ」
嘘、本当は触れられるのに耐えられなくなっただけ。その手で私に触れる事に、きっと彼は何の疑問も抱いていないのだ。
緊張しているのは私だけ。友達以上を望んでいるのも________私だけ。
いいの?とぱっと表情を明るくすると、Broooockは嬉しそうに席を立つ。遠慮の欠片もないこういう所が末っ子気質だと言われる所以だろう。
別にいいよと返し、彼の手が離れた髪を撫でる。
「…Broooock」
「ん〜?あ、スタバ寄る?新作飲みたいって言ってたでしょ」
叶えられる距離にはいる筈なのに、彼の心にこの恋心はきっと届かない。ここで私が想いを打ち明ければ、おそらく全てが無に帰してしまう事だろう。
それなら言わない。危ない橋は、渡らない。
A?と不思議そうに首を傾げた彼が私を見つめる。
「…ごめん、何でもない。早くスタバ行こ」
……そう、"ただの友達"でも、別に構わないのだ。
それで彼の隣を守れるのなら、それで。
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あいら - ありがとうございました!引くほど鬼リピします! (2021年12月7日 23時) (レス) @page39 id: 508c9e96c0 (このIDを非表示/違反報告)
つきりと - 長い間お疲れさまでした…!いつも楽しみに読ませてもらいました!!長編小説のほうも大好きです!!これからも応援してます! (2021年11月24日 14時) (レス) @page39 id: 91c51e0192 (このIDを非表示/違反報告)
あみだくじです(プロフ) - まめこさん» あっありがとうございます…!!!!! (2021年9月26日 9時) (レス) id: fe4eb2c8c6 (このIDを非表示/違反報告)
音夢nemu(プロフ) - まめこさん» ありがとうございます、、、!! (2021年9月25日 23時) (レス) id: 927429c6cf (このIDを非表示/違反報告)
まめこ(プロフ) - あみだくじですさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます…!!リクエスト承りました、お待たせしてしまうとは思いますが必ず書かせていただきます🙇♀️ (2021年9月25日 23時) (レス) id: 17312d353f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まめこ | 作成日時:2021年7月9日 22時