【忍たま】あえて言うなら雨女。【トリップ】 (ページ12)

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9:立ち上がる雨女ページ12

箱を開けてみると、数十冊あるかな？くらいの日記が出てきた。

これはなんだろう。

そっと日記を開くと、頭の中にフラッシュバックのように見覚えのない光景が流れる。

最初は、幸せそうで、微笑ましいような感じだった光景が、1人の女のせいで狂っていった。

天女に操られる上級生。ひどい仕打ちをされる下級生。

身も心もボロボロになっていく先生達。

なんとも惨いもので、私は目を覆いたくなる衝動を抑える。きっと今、私が見ているのは忍術学園の過去だから。

(これは、忍術学園の皆…と、誰？)

「天女を…せ」

憎悪にまみれた目と、握られた苦無。

(なんて言ってるの…？)

「これでいいんだよな、雷蔵」

(雷蔵って…)

「天女は…天に還るべきなんだよ」

(天に還る…。即ちそういう事か…)

何人も、何人も、天に還されていく…。

それはあまりにも惨く、残酷であった。

「お願いじゃ…この日記を見ているお主、お主の力で…この学園の呪縛を解いてはくれぬか…？」

学園長先生の、懇願する声。

「次は…だな」

(っ！？)

私は咄嗟に日記を閉じた。

「…はぁ、はぁっ…！」

全身から冷や汗が止まらない。

『次はお前だな』

確かに、そう聞こえた。

違う、私は天女じゃない。なのに、どうして？

思考回路がショートする音がした。

と同時に、ザァァァァと雨の音がする。しかも雷がなる始末だ。さっきまでは晴れていたのに。

それに、あの時の…泣き叫ぶような、あの声…。

「…私がここに来る時に聞いた声と同じ…？」

自分の手のひらを見つめながら呟くと、襖の開く音がした。

ばっ！と振り返ると

「ヘム〜？」

「え？」

そこには、白い毛並みの見覚えのある犬が立っていた。

「えっと、ヘムヘムだっけ…？」

私は四つん這いでヘムヘムに近寄る。

「ヘム！」

ヘムヘムは元気よく返事をすると、私の胸に飛び込んできた。

「うわ！」

思いがけずよろけるが、しっかりと受け止める。

「ヘム！ヘムヘム、ヘムヘーム！」

ヘムヘムはなにかを訴えるように言って、私の頭をそっと撫でてくれた。

「！」

大丈夫だよ、1人じゃないよ、と言われているような気がした。

私はヘムヘムを抱きしめて

「そう、だね。そうだよね！」

クヨクヨしてられない。私は立ち上がり、部屋に明かりを灯し、襖を勢いよく開けた。

「ヘムヘム、私、頑張るから！」

「ヘム！」

そう言った私の真後ろで、雨上がりの月が私を応援するかのように輝いていた。