【忍たま】あえて言うなら雨女。【トリップ】 (ページ11)

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8:雨女と歌と大きな箱ページ11

事務の仕事も明日からでいいよ、と言われてしまったため、自分の部屋に戻ってきた。

部屋に戻るなり、全身の力がふっと抜ける。

疲れを紛らわせようと私はイヤホンを片耳だけ付けて、音楽を流す。

アイネクライネ。私の好きな曲だ。

「〜♪」

曲に合わせて私は歌う。誰もいない、暗い部屋の中で。

そっと、密やかに。

もう、殺されるだとかなんだとか、部屋の中でも警戒心を保っていなければならないなんてあんまりだ。

「〜♪…ふう」

歌い終わって一息つくと、ガタッと襖が動く音がした。

「誰？」

襖の方を見ると、誰もいなかった。

「今の、聞かれてたってことか…」

そう思うと、疲れはどこへやら、恥ずかしさが徐々に心の底から湧き上がってきた。

うわっ、やばい恥ずかしい…。

なんかの手違いで忘れてくれないかな、とか思う私とは。

(でも、私にとって歌は精神安定剤のようなもの…。聴いたところでなんかなるって訳でもないんだけどな)

そんなことを思いながらスマホの時計を見る。

(まだ夕方か…)

時が経つのは遅いと感じたり早いと感じたり…どうしたもんだろうか。

私は押し入れからずるずると布団を取り出して、着物から、何故かあった自分か普段着ている部屋着に着替えた。

「はぁ…やっぱこれ楽だなぁ〜」

ごろごろと布団の上を転がっているとふと、開けっ放しにしていた押し入れのあるものが目にとまる。

それは、大きな箱だった。

「…ん？」

私は気になって近づいて見てみると

「ゔっ…なんか、嗅いだことあるような…くっさ…」

箱を手に取ると、その匂いは一瞬で消える。

…なんなんだろう。