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舞台が終わって劇場を出ると9月だというのに少しひんやりとした空気に包まれた。
丸の内の雰囲気好きなんだよなーなんて地下鉄まで歩いてると携帯が鳴った。
「⋯⋯もしもし」
「今日夜ドライブね、家迎えにいくから」
「え？今日？」
「うん、いったん家帰ってすぐAちゃん家いく」
準備してまっててね、と一方的に言われて電話を切られた
⋯⋯マジか。
音声通話0:20と履歴が残ったトーク画面をスライドさせて違うトークルームに移る
「今日急遽実家帰らないといけなくなっちゃった、舞台お疲れさま」と文字を打って送信する
湧からの「えー今日家行くつもりだったのに」のメッセージは未読のまま。
私は家に帰ってさっきのワンピースを脱いでラフな服に着替えて軽くメイクを治した。
降りてきて、と通知がきてカバンをもってマンションの下まで降りると1台の車が止まってて中には複雑そうな顔をした彼
助手席に乗り込むと前髪を弄りながら私が話し始めるのを待って黙ってる彼
「⋯お疲れさま」
「⋯⋯今日来るの知らなかったんだけど」
「あ、うんごめん急だったからさ⋯⋯」
「しかも湧じゃん誘ったの」
「うん、でも光輝くんかっこよかったよ」
なんて言ったらすぐ機嫌が戻ることをわたしは知ってるから。
「⋯⋯マジ？」
手を口に当ててニコニコしてる光輝くん
分かりやすくて、本当にかわいい
「うん、でもさ顔に出すのやめてくれる？」
「えーだってさー」
口をとんがらせて私のことを見る
「湧の女がきてるってうちむが言っててさ、それ見に行ったらAちゃんがいたんだよ？普通に怒るっしょ？しかも初めましてなんて言われたら⋯⋯」
「それはごめん(笑)でも湧にバレかけたんだからね」
次は気をつけてね、と頭を軽く叩くと「いてえ、」なんてわざとらしく笑って「わかったよ、ごめんね」と言った。
「よし、シートベルトして」
と助手席側の窓に手をついて私のシートベルトを手に取る
「ね、自分でできるし、近い⋯⋯」
「ん？」
私の顔の目の前に光輝くんの顔
ぱっちり二重に涙袋、唇もプルプルで、何回みてもこの綺麗な顔に吸い込まれそうになる
「そんな可愛い顔で見られるとちゅーしたくなる」
「⋯⋯ばかじゃないの」
精一杯の抵抗で光輝のほっぺを摘むとそのまま近付いてきて私たちの顔は重なった。
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作者名：ぴ | 作成日時：2022年9月14日 7時
