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「…もういい」
ルクはそう言うと、深紅の瞳を伏せAの首へと視線を落とした。
彼女はそれでも抵抗すらしなかった。
ルクはできないことの間違いかとも思ったが、違った。抵抗をしようとしていなかった。
彼に身を委ねる気で、きつく瞳を閉じ恐怖に耐えていた。
予想だにしていなかった事態にルクも困惑する。
Aの最善のために少しだけ距離を取ろうとしているのに、彼女はちっともしがみいている手を離そうとはしない。
今回も結局はいつものようにルクが折れるしかないのだ。
今度は必要以上に怖がらせてしまったAを慰めることへ思考を振らなければならない。
せっかく目を閉じて待ってくれているのだから何か期待を裏切らない驚くようなことをしなくては。
先ほどと同じように首筋へ顔を寄せたルクは鼻先を押し付け、更には唇までも押し付けた。
そして薄く開いた口から覗く牙で白い肌をなぞる。
しつこいほど動脈の上を行き来させ、その緩やかな行為は優しくAを更に緊張させた。
幸い、今は吸血衝動は顔を覗かせてはいない。
Aの腕の自由を奪ったまま、かぷりと牙で肌に傷を付けないよう甘噛みを施す。
以前に彼女の耳を口に含んだことがあるが、それと全く同じ要領である。
ちらりとAの様子を伺うと、まだ訪れない痛みをただ覚悟しぎゅっと目を閉じている。
そろそろ気づかないものかと思ったが、思い込むとなかなかそこから抜け出すのが難しいのだろう。
少しだけリップ音を立てるようにして唇を首から離したルクは再びAの目の前に顔を寄せた。
そして、彼女の名前を優しく呼ぶ。
開かれた黒曜石のごとく輝く瞳が自身を映したことで片方の口角を押し上げた。
そこでやっと彼女は自分がされたことに気づいたらしい。
みるみる顔を真っ赤に染め上げ、口を尖らせる。
「ひ、ひどい！！」
「ひどいのはどっちだよ、俺の気も知らないで。言っとくけど、今言ったことは嘘じゃないからな」
「う……」
「次にまた吸血衝動に襲われてお前に飛びかからない保証なんてどこにもないんだぞ。そうなったらお前を殺すまで血を啜るかもしれない」
「………」
「それを分かって物を言えよ。わかったか」
Aが小さく頷いたことでとりあえずは納得したらしいルクは親が子供にするように頭を撫でた。
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こんぺいとう(プロフ) - RiAさん» ありがとうございますー！この頃更新が遅くなって日付を跨ぐこともしばしばですが１日１更新は必ず守っていきますので、どうぞよろしくお願いします♪ (2020年10月2日 19時) (
レス) id: 61b77cc65e (このIDを非表示/違反報告)
RiA(プロフ) - こんぺいとう様の作品全部大好きです(＞＜)ずっと応援してます！更新楽しみにしてます！ (2020年10月1日 11時) (レス) id: 5404c24946 (このIDを非表示/違反報告)
こんぺいとう(プロフ) - ありがとうございます！ちょっぴり切なくてシリアスですが、今後もお付き合いくださいー！ (2020年9月30日 21時) (レス) id: 61b77cc65e (このIDを非表示/違反報告)
ひなどり。(プロフ) - ストーリー凝っててすきです…応援してます (2020年9月30日 19時) (レス) id: b8745ce36d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こんぺいとー | 作成日時：2020年9月24日 22時
