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06.誘惑 ページ6

恋をすると人生は変わる──なんて話を聞いたことがあるが、あながち間違いではないのかもしれない。

 バーソロミューさんはハンサムと呼ばれる類の男性だ。昨夜、恋心を自覚してからというもの、わたしの目に映る彼は一段と輝いている。



「で、私はそう思ったのだが、Aはどちらが好みかな?」



 こうして彼の声を聞いているだけで、わたしの胸は熱くなるのだ。



「……A?」
「え? あっ、はい!」
「昨夜から様子がおかしい。何かあったのか?」



 またやってしまった。本日何度目かの聞き逃しに、バーソロミューさんは訝しげにこちらを見つめてくる。

 彼の唇から紡がれる音に聞き惚れるのはいいが、その内容が右から左へと受け流されていては意味がない。寝不足で集中力がきれていたのもあるだろう。咄嗟に言い訳ができるほど今の頭の回転は速くなかった。

 澄み渡る海のような瞳がわたしを捉えて離さない。芽生えたばかりの恋心まで見透かされてしまいそうで、慌てて目を逸らした。



「A」



 咎めるような声音に肩がびくりと震える。そろそろと彼に視線を戻してみれば、あの美しい顔が先程よりもずっと近くにあった。

 大きな手がこちらへ伸ばされる。それはわたしの頬に触れ、するりと優しく撫でた。

 途端にわたしの心臓は早鐘を打つ。ゴツゴツした手のひらは温かくて、思わず擦り寄りたくなる。この鼓動が彼に伝わっていないだろうか。

 彼は目を逸らさない。凪いだ海はすっかり姿を消し、荒々しい熱が灯る。



「目元を隠してみてくれないか」
「……え?」



 艶めかしい雰囲気はそのままだが、彼の言葉にどこか違和感を覚えた。目元を隠す、とはなんだ。それはつまり──。



「初めて会ったときより前髪が伸びてきている。櫛で梳けばなんとか隠せるんじゃないか? カルデアの子たちは大方眺めた。いや、それでも飽きることはないのだが……ここで新たな発見があるかもしれない。A、君ならわかってくれるだろう? メカクレの可能性を私に見せてくれないか」



 早口でまくしたてられ、一瞬何を言われたのかわからなかった。バーソロミューさんは、しどろもどろになっているわたしに、ずいと顔を近づける。

 頭に鳴り響くサイレン。そこから導き出された解答。



「無理です!!」



 脱兎のごとく駆け出したわたしは、またしても彼の前から逃げ出すことを選んでしまったのである。

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設定タグ:FGO , バーソロミュー , Fate   
作品ジャンル:恋愛
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星良(プロフ) - 爆死★さん» ありがとうございますッ!!!!! (2020年11月14日 19時) (レス) id: ca2b877203 (このIDを非表示/違反報告)
爆死★ - スッッッキ!!!!(スッッッキ!!!!) (2020年11月10日 17時) (レス) id: da8da72c3c (このIDを非表示/違反報告)
星良(プロフ) - 王のお話さん» ありがとうございます!そう言ってもらえて嬉しいです!初めてのコメントで感動しました……貴方のそのお言葉がとても励みになります、本当にありがとうございます!!(ただいま新作を準備しております。お楽しみに!) (2019年8月23日 11時) (レス) id: fa3e8c95cc (このIDを非表示/違反報告)
王のお話 - 突然のコメント失礼します。率直に言いますととても感動しました!最初から最後まで話にとても夢中になりました!小説を読んでこんなに気持ちが昂ぶったのは久々で、とても楽しかったです!もし別作品を書く予定がありましたら是非読ませてください! (2019年8月23日 2時) (レス) id: d7d108a59e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:星良 | 作成日時:2019年8月13日 13時

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