Episode 07 ページ8
「……見合いの相手、憲兵団だっけ?」
「……ああ」
「憲兵団なら自分より死ぬ確率が低いから?戦場から彼女が遠ざかれば守れると思った?」
「………」
「図星か。ほんととことんバカだねあなた」
「うるせえな……」
ハンジは心から呆れたようにため息を落とした。
彼の気持ちもわかる。常に死と隣り合わせの自分たちにとって恋愛感情なんて必要のないものだ。守りたいものができれば人は死を恐れる。そうなれば人は弱くなる。
人類に心臓を捧げたリヴァイにとってAへの想いは不要のものだったはずだ。
だが、感情というものは理屈では言う事を聞かない。彼の意思とは別に心は彼女に惹かれていったのだろう。
彼女を愛しているから自分から遠ざけようとした。悲しませたくないから違う道を歩ませようとした。たとえ自分の気持ちを押し殺してでも彼女が幸せなら、彼女が生きていてくれるならいいと思ったのだろう。
本当に不器用で、本当に馬鹿だ。
「ねえリヴァイ。Aは調査兵団をやめることはないと思うよ。あなたに傷つけられたとしても、傍にいたいというあの子の意思は固い」
「………」
「わかってると思うけど、Aはあなたのこと好きだよ」
「知ってる」
恋人にはなれないとわかっていても諦めないと言った時の彼女の表情が頭をよぎる。あんな強い瞳をした子がここを去るわけがない。
「あー…でも憲兵団の男が誰かさんと違って男前で背も高くて性格よかったらそっちに行っちゃうかもなー。傷ついてる女の子は優しくされたら弱いし。それに確かA明日非番だったよねー」
「死ね、このクソメガネ」
「うわっ!人の私物投げないでくれる!?」
枕が飛んできて、ハンジは顔に当たりそうになるのをギリギリのところで受け止める。ほんとにこいつはこっちが女だってことを忘れてるんじゃないだろうか。
「戻る、邪魔したな」
「振られたら慰めてあげるよ」
わざとらしくウインクをすると、心の底から嫌な顔をされた。
「いらねえよ。きたねえ」
「あなた……私だって一応女なんだけど」
扉に向かって歩いていく背中に嫌味の一つでも言ってみる。その背中はどこか吹っ切れたような力強さがあり、ハンジは安心したように瞳を細めた。
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作者名:マキノ | 作成日時:2021年10月26日 17時