名も無い関係【進撃の巨人】 (ページ9)

今日:4 hit、昨日:0 hit、合計:11,862 hit

Episode 08 ページ9

「おはようございます。ハンジ分隊長」

「……おはよう、A」

次の日に食堂で会ったAが普通で、ハンジは思わず言葉を失ってしまった。明るい声も笑顔もいつもと変わらない。

その普通さが逆に心配になるほどに彼女は普通に振舞っていた。

ただ、目が赤く腫れている。昨晩はきっと泣き明かしたのだろう。

泣き明かして何を吹っ切ったのだろうか。リヴァイのようにいい方に吹っ切っていればいいが、その逆もありえる。

「今日はAは非番だったよね。どうするの？」

それとなく探ってみる。ほんとことごとく自分はお人好しだ。

「……久しぶりに家に顔を出そうと思ってます。ずっと手紙だけで会いに行ってませんでしたから」

「そ、そっかー。お母さんも喜ぶね」

「はい。少しは親孝行しないといけないと思って」

皆の食事の準備をするAの表情はこちらからでは目にすることができない。ただ、彼女が昨日のことをきっかけに悪い方に吹っ切ってしまったのは確かかもしれない。

＿＿＿＿あのバカ。だから言ったのに。

続々と食堂に集まる班員にハンジは笑顔を作って挨拶を交わす。
これだけ人が来てしまってはAにこれ以上の詮索をすることは難しいだろう。

「……リヴァイは？」

そういえば当の当事者の顔が見えない。ハンジの質問に答えたのは、意外にももう一人の当事者のAだった。

「朝早くに出て行かれましたよ。人が来ていたようですから団長がお呼びになられたのではないでしょうか？」

Aの言い方だと、直接見たわけではなさそうだ。なのに知っているということは彼女がその時間に起きていたということになる。

つまりは昨日の出来事のせいで寝ることができなかったのだろう。

「そっかー。Aの食事を逃すなんてあいつもついてないね」

ハンジの言葉にAはどう反応していいのかわからないといったような困った笑みを返す。

ハンジは心の中で、ここにいない当事者に彼の口癖の舌打ちをしたくなった。