Episode 12 ページ13
「なのに今更……。私とあなたの間には何もない。それが事実でしょう?だったら……………」
「黙れ」
「っ!」
自分勝手だ。
人の気持ちも知らずにかき乱して。
心を揺さぶって、傷つけて、惑わせて。
「……いい加減にしてください。私は兵長のおもちゃじゃありま____」
風を切るような速さで彼女の唇をリヴァイが自分のそれで塞ぐ。起きた現実に彼女は信じられないといったように瞳を大きくした。
「んっ!」
抵抗するようにリヴァイの胸を力いっぱい押し、体が離れるとAは反射的にリヴァイの頬に向けて手を振り上げる。
しかし、それは簡単に阻止されて、そのまま、手を壁に押し付けられた。
「痛っ……!」
「黙れって言ってんだろ」
___怖い。
彼女の体が恐怖で震えていることに気がつくと、リヴァイはバツが悪そうに顔を歪めた。
「……悪い」
押し付けていた手の力を離し、リヴァイはAを解放する。
今なら逃げることができるのに、彼女はそれをすることができなかった。
目の前にいる人物が自分の知っているリヴァイに思えなくて混乱する。いつだって冷静でどんな時だって自分の感情を抑えて行動することができる人物が、目の前で自分自身をコントロールできないなんて。
もしかして。
彼自身、自分の感情にどうしていいのかわからないのかもしれない。
そう思うと、Aはその場から動くことができなかったのだ。
「……話がしたい。手荒な真似をして悪かったな」
「……いえ、大丈夫…です」
「場所を変えるぞ」
「はい……」
くるりと踵を返すようにしてリヴァイが歩き出す。
いつも追っていた背中をAは複雑な気持ちでいつもと同じように追いかけた。
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作者名:マキノ | 作成日時:2021年10月26日 17時