名も無い関係【進撃の巨人】 (ページ14)

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Episode 13 ページ14

リヴァイがAを連れてきたのは調査兵団が使っている建物の一室だった。

確かにここなら、二人が一緒にいても怪しまれることはない。ただ、Aが私服なのでそれなりに目立ってはいたが、リヴァイはそんなことを気にする素振りを全く見せなかった。

「先に入ってろ。エルヴィンに一応許可を取ってくる」

「はい」

必要最低限のものしかないそこはガランとしていて、彼女はどうしていいのか分からず、窓際に立ち外を眺める。

ここからだけ見る景色は、平和そのもので今自分たちが置かれている立場を忘れてしまいそうになる。

だが、一歩塀の外へ出ればそこは地獄そのものだ。

初めて行った壁外調査のことを思い出すと、今でも体が震えそうになった。

思い返せば、あの時から自分は彼に惹かれたのだと思う。なにも

出来ない自分を叱咤し、そして強く「生きろ」と言ってくれた。

その時からこの人のために生きると決めた。心臓は人類に捧げたが、その他のものは彼に全て捧げたいと思った。

そう考えると、今の自分の立場は幸せだといってもいい状況なのに。どうしてそれ以上を望んでしまったのだろうか。

扉が開く音がして、Aは反射的にそちらを振り返った。

「許可はとってきた」

リヴァイは扉を締めると、そのままベッドにドサリと腰を下ろす。

「団長、不審がられたのでは？」

「別に何も。あいつは詮索するタイプじゃねえよ」

「そうですね……」

困ったように笑う彼女をリヴァイはジッと見つめる。居心地の悪さに彼女が瞳をそらすと、リヴァイは小さくため息を落とした。

「いつまでそこにいるつもりだ」

「え……」

「来い」

ポンっと自分の隣を叩くリヴァイにAは小さく頷いて腰を下ろす。

触れている肩が熱い。妙に緊張してしまって、自分のスカートの裾をきゅっと握り締めた。

「A」

触れれば壊れてしまうものに触れるかのように優しく、そっとリヴァイの手が彼女の頬に触れる。そのまま、親指は彼女の唇を辿るように撫でた。

その行動にどう反応していいのかわからないAはただ、瞳を揺らすことしかできない。