名も無い関係【進撃の巨人】 (ページ12)

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Episode 11 ページ12

どれだけこのまま歩いてきただろうか。

憲兵団の兵舎からずっと掴まれたままの手首はジンジンと痛みを帯びてくる。この痛みから逃れたいが、簡単には逃してくれないことは力の強さで分かる。

きっと掴まれている部分は赤くなってしまっていることだろう。

彼女の手を引き、無言で歩くリヴァイの姿は目立つ。周りのからチラチラとすれ違う人の好奇心の目が向けられている。それもそうだろう。あの人類最強が女子の手を掴んだままズカズカと歩いているのだ。

Aにとってその好奇の視線は手首と同じくらい痛かった。

「……兵長」

「………」

「兵長、離してください」

Aの声が耳に入っていないかのように、リヴァイは手を離すこともなければ、歩く速度を緩めることもなかった。

Aは意を決したように足を早めリヴァイを追い抜き、彼の足を止めるためにその前に立ち塞がった。ぶつかりそうになり、Aの方が後ろに下がることになってしまったが、リヴァイの足を止めることはできた。

「兵長」

「来い」

「きゃ……！」

短い悲鳴とともに、Aは住宅の路地裏へと引き込まれてしまった。力任せに引き込まれた為、こけてしまいそうになるのを、なんとか耐えた。

が……

「！」

逃がさないとでも言うように、今度はリヴァイの腕がAを閉じ込める。

射るような視線が怖くて視線を逸らしたくなるが、Aは唇を噛み締めてそれをなんとか耐える。それが彼女なりの唯一の抵抗だった。

「な、なんで兵長がここにいるんですか」

震えそうになる声をなんとか押さえ、喉の奥から絞り出す。

「私の好きにしろと言ったのは兵長です。自分には関係ないとおっしゃったじゃないですか」

もしかしてと思いたい自分と、もう期待をしてはいけないと警告する自分がいる。

Aの中で勝ったのは警告する自分の方だった。それは警告というよりも、自分を守るためなのかもしれない。これ以上、傷つかないように。これ以上、彼の口から否定されないために。