名も無い関係【進撃の巨人】 (ページ20)

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Episode 19 ページ20

鼻の奥がツンっと痛くなって、Aは泣きそうになってしまった。二人の会話から、ハンジがリヴァイの背中を押してくれたことがわかる。

彼女がいなかったらもしかしたら違う道を歩いていたかもしれない。

なにより、彼女もリヴァイのことを想っていたのに後押しをしてくれたのだ。自分がそれをできるかと問われればAはできないかもしれないと思う。

この人はどれだけ優しく、そしてどれだけ彼のことを想っているのだろうか。愛しているからこそ、彼の想いを汲んで後押ししてくれたのだと思うとAは胸の奥が熱くなった。

「ハンジ分隊長」

「ん？」

「私、ハンジ分隊長のこと好きです。大好きです」

「A……」

今にも泣き出しそうなAにハンジはくすりと笑って瞳を優しく細める。

「気持ちは嬉しいけど、君の隣の奴がすごい勢いで睨んでくるんだけど……」

「………」

「今度、ゆっくり話そう。その時はとびきりの紅茶入れてね」

「はい！」

ひらひらと手を振り、去っていくハンジにAは深く頭を下げる。油断したら泣いてしまいそうで唇を噛み締めて堪えた。

「A、部屋もどるぞ」

「はい」

腰を支えられたままなのが彼の独占欲からくるものだと思うと、嬉しくなってしまう。頬がほころんでしまいそうで、Aはまたきゅっと唇を噛んだ。

「A」

「は……」

返事をするより早く、瞳を閉じるよりも早く。リヴァイは自室の扉を開ける前にAの唇を塞ぐ。

「へ、兵長」

「今日は覚悟しとけよ」

「え……」

「今日だけは特別甘やかしてやるよ」

ギイっと音を立てて、彼の自室のドアが開く。

「……はい。兵長も覚悟してくださいね」

Aは挑戦的に微笑んだ。

今夜だけのことだとしても、それでも構わなかった。
この関係は永遠に特別なのだから。

fin.