名も無い関係【進撃の巨人】 (ページ17)

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Episode 16 ページ17

「……手を離すほうがいい結果を生むんじゃないかと思った」

「え……？」

少しぶっきらぼうに言葉を紡ぐリヴァイに、Aは目が離せなくなる。

「俺じゃなければ、お前は幸せになるんじゃないかって思ったんだよ」

「だから……お見合いしろって言ったんですか……？」

「………」

「……っ」

涙で視界がぼやけて彼が今、どんな顔をしているのか見えなくなってくる。耐え切れなくなった涙の粒が一つ、また一つと握り締めた手の上にポタポタと雨のように落ちては跳ねた。

この人はどこまで優しいのだろう。その背中に人類の希望と、人々の想いを背負って。自分の幸せなんて、感情なんて後回しで。

きついことも厳しいことも全部本当は優しさの裏返しなのだ。

「……兵長は……馬鹿です」

「………」

「私の幸せを勝手に決めないでください」

幸せにして欲しいなんて思ったことなんてない。ほかの人と幸せになんてなれるわけなんてない。

この心はあなた以外には響かない。

「私は兵長じゃなきゃダメなんですよ。あなたじゃなきゃダメなのに……」

Aはそれ以上は言葉が続かず、顔を覆ってボロボロと泣き出す。そんな彼女にリヴァイはその手を掴んで涙で濡れる瞳にそれを止める魔法のように、何度も何度もキスを落とした。

「もう離さねえぞ。いいのか？」

「構いません」

優しく頬を撫で、指で涙を弾いてくれる手にAは自分の手を重ねる。

「絶対に兵長の傍を離れたくありません」

「……ああ」

「私の幸せは兵長の傍にいることです。兵長が生きていることです。ほかの人なんていらない。兵長じゃなきゃ嫌です」

それ以外、もう望んだりしない。傍にいてくれればいい。求めてくれればいい。

＿＿＿＿死なないで、生きてさえくれればいい。