＊この世で最も美しく、哀しくない話part６＊ (ページ4)

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和也の掌が、私の瞼を押さえる。

掌の温かさと、涙の熱さが、混じり、息も熱い。

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和「見んな。見なくていい」

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和也が私の視界を、真っ暗な世界を、掌で包む。

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智「･････あぁ、俺さ。君にも興味あったんだよ」

大野さんが、現われた和也に驚いた様子は、声からは微塵も感じとれなかった。

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智「最初から俺のこと、疑って、嫌ってたデショ？初めての経験だったもん」

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クスクスと大野さんの笑い声が聞こえる。

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智「なんで？どうして最初から俺のこと疑ってたの？教えてよ」

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和也の声が、冷たい空気の中に溶けていく。

和「性格悪い顔してんだよ、お前」

智「初めて言われたなぁ～･･･」

和「顔も頭も金も持ってる『出来た男』が、わざわざAに惚れるわけねぇだろうが」

和也の台詞は、やっぱり今日も腐れ外道だ。

悪かったわね！といつもなら私が和也にキーキー怒るところだ。

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和也のニットが、頬に当たる。

傷が癒えていく。身体が、和也に包まれる。

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初冬の、透明な空気の中で、和也と過ごした夏の匂いがした。

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初冬の、透明な空気の中に、和也の声が凛と響いた。

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和「顔も頭も金もある出来た男でAに惚れる男なんて

俺１人で充分なんだよ」

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カサ・と枯れ葉を和也の足が踏みしめる。

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和「俺の恋心になんか微塵も気付かない、馬鹿な子なんだけどね？

俺はこの馬鹿を守る為ならなんでもしちゃうので。」

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和也の声が耳元で低く響いた。

和「･･････あーあ、一生言う気なかったのにな～」

そして、小さく、笑った。

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和「･･････今度は本当に嫁にこいよ」

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私の腕は勝手に和也の腕を抱き締めていて。

闇の中で、もう２度と感じることはないと思っていた温かい感情が身体を包み、

この人が愛おしい。愛おしい。愛おしい。と、また思った。