＊この世で最も美しく、哀しくない話part２＊ (ページ13)

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行かないで。

と叫びたかった。

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行かないで。

行かないで。

雅紀。雅紀。雅紀。雅紀。

・

・

雅紀が、私じゃない人と歩いて行く。

振り返らないで。

そう願い、

振り返って私の側に走ってきて。

そう願い、

全部が夢でありますように。

そう願い、

いっそ出会いから全部、夢ならいいのに。

そう願い、

だけどあの心臓が鷲掴みにされる幸福な時間が

優しい声が

長い指が触れる熱さが

忘れたくないと叫んでる。

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・

・

忘れたいのに、忘れたくない。

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・

A「ひぃ………」

雅紀の背中が見えなくなってから、壊れた機械が軋むような

悲鳴が漏れた。

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風が吹く。

恋が終わっていく。

愛が、終わっていく。

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あんなに愛した人が、他人になっていく。

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私のすべてだった人が

私を置いて歩いていく。

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「……なんですか？私に消えろって言いたいんですか？

赤ちゃん、殺せって言うんですか？」

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生涯できっと一番の、言葉の刃で切られた。

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これは夢だ。

あの日の夢だ。

夢だ。分かってる。

分かっているけれど、私はまた悲鳴をあげながら泣いている。