＊この世で最も美しく、哀しくない話＊ (ページ25)

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少し、痩せた？

相変わらず、髪の毛サラサラだね。

久しぶり。

どうして電話なんかするの？

どうして、会いにきたりするの？

ずるいよ。

悲しい。

何もなかったみたいに笑える？私は無理だよ。

ううん、嘘。全然平気。

あなたのことなんか忘れてた。

嬉しい。

会いたかった。

ムカつく。

会いたかった。

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何かを言わなきゃと、頭を言葉がグルグル回る。

嘘が回る。真実が回る。真実に目を背けたら、嘘が回る。回って真実になる。

だから私はまた嘘を探す。

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泣くな。泣いたら、止まらなくなるから、泣くな。

それだけを震える自分に言い聞かす。

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私と雅紀は、泣きたいのに泣けない子供みたいなくしゃくしゃな顔で小さく笑う。

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変わってないね、雅紀。と思った。

変わっていないことが嬉しくて、哀しかった。

別人になっていてくれたらよかったのに。

嫌な男になっていてくれたらさ、私は清々した気分であなたを忘れられたのに。

そう思った後、馬鹿みたいだと思った。

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変わっていないわけないじゃない。

同じ場所に立ち止まったままの私とは違う。

雅紀のこの２年は、人生において重要な出来事がいっぱいあったはずだから。

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どれくらいの時間、私と雅紀はそこに立っていたんだろう。

２人の距離は縮まらず、２人の思いは言葉にならず、

お互いが何度も何度も何かを言おうとし、結局口を噤んだ。

それは、あなたが私を忘れていなかったからだと思って嬉しくなった私は本当に馬鹿だ。

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震える世界を破ったのは、不躾なアイツらしい一言だった。

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「電話繋がらねぇし」

イラだった声にハッと顔をあげると、三好屋の紙袋を持った和也が

眉を顰めて私達を見ていた。

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A「･･･和也･･･」

和也はチッと小さく舌打ちした。そして雅紀を見た。

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和「相葉くん」

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和「Aと結婚する直前に他のオンナを妊娠させて、出来婚したキミが

今更、Aに何の用があるのかな？」

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和也がニッコリと、雅紀に微笑んだ。