＊この世で最も美しく、哀しくない話＊ (ページ12)

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怒りに任せて靴を投げて、硝子のハートを粉々に砕かれたら

キュルルル････お腹が鳴った。

和也が「ホラ、とっとと飯食いに行こうぜ」と私の頭をポン、と撫でる。

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A「････････」

スゴスゴと和也の後ろを追いかけて玄関を出ると、もう辺りはすっかり暗くなっていた。

夜の匂いがする、と思った。

玄関前に植えられた名前も知らない花の匂い。草の匂い。木の匂い。

そしてどこからか漂ってくる夕飯の匂い。

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和「････カレーだな」

A「･･･どうして漂ってくるカレーの匂いってこんなにいい匂いなのかな」

和「お前の靴の臭いと大違いだな」

A「神様、この男が不幸せになりますように！」

和「心の声聞こえてんぞ・笑」

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和也が白の長袖シャツ姿で、薄暗い夜の中を歩いていく。

ぼんやりと浮かぶその背中は雅紀に被った。

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和「結婚祝いだし、いいモン食うか」

ポツリと和也が言い、

A「明日、役所に行って撤回してきてよ」

私の言葉には返事をせずスタスタと歩いて行く。

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和「今日は俺のオゴリ。なんでも好きなもの食えよ」

ガタン、と横に座り私に言う和也。

･･････台詞だけは素敵やのう？え？この腐れ外道？

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和「俺、ビールとチャーシューメンと餃子」

カウンター越にツルピカハゲ丸のおっちゃんに言う和也。

･･･････いや、いやね？全く望んでいない結婚だし？まあ明日にはこの

馬鹿らしい関係を絶つべく役所に私が行くけどね！？

仮にも「結婚祝のディナー」じゃないの？おう？おうおうおうおう？

お前、金持ってんだろうが。稼いでんだろうが。おう？

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A「小汚いラーメン屋って、お前！」

和也の耳元でひくーーーい声で囁いた後、

A「ビールとラーメンと炒飯と餃子と唐揚げ！！！」

私はそう叫んで、割り箸を歯で横に咥えてパァン！と割った。

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和也とツルピカハゲ丸のおっちゃんが

「お･･･オットコマエ～～～」と言ったので「おうよ！」と答え

出てきたジョッキを和也の後頭部にゴツン！と当ててからグイーーーーーと飲んだ。