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虹沢の駅に着いた時は８時を超えていた。
虫の声が遠くで聞こえる。
この時間なのにひっそりと静まり返った駅前にタクシーを１台見つけて
後ろを歩いていたトキコさんに声をかけた。
翔「一緒に乗りませんか」
どうせ行き先は一緒だ。
トキコさんは小さく微笑んだ。
「いえ。･････少し、街を歩いてから行きます」
・
歩いてもろくに店もない街並みだろうと思ったけれど、その気持ちは痛い程分かる。
俺も何度も経験があるからだ。
早くシオリに会いたい。
会って話したい。抱きしめたい。
だけど、会う度に痩せて衰えていくシオリに、別れが近いことを痛い程感じることが怖い。
会いたい。
会いたくない。
・
どうか、全部夢だったと誰か言ってくれ。
病気？治ったよ。って笑ってくれ。
だからお嫁さんになってもいいかなぁ。って笑ってくれ。
・
・
・
何度、そんな夢を見ただろう。
病院が見えてくる。カチカチ･･･と音を立てるタクシーのウインカー。
10000円札を出すと運転手はミラー越しに面倒臭そうな顔をした。
4000円程度の釣を「釣はいいです」短く言ってタクシーを降りる。
・
・
・
・
２階のシオリの病室に行く為に受付のナースステーションに声を掛けた時に、
嫌な予感はした。
数人はいるはずのナースステーションに、誰もいなかったから。
・
・
・
シオリであるはずがない。
身勝手に願う。他の誰かであってくれ、と願う。
背筋を伝う汗が冷たい、と思った。
駆け上がる階段の手すりが氷のようだ、と思った。
・
・
「お母さん！」
・
・
廊下に響くその声が、雫のものだと全身で理解する。
･･････････シオリ･･････････！
２１２号室のドアを開ける。
中には数人の人間がいた。
見覚えのある看護師と医者がいた。誰かに、何かを言われた。
機械の音も、聞こえた気がした。
・
・
・
「･･･････櫻井さん･････････」
雫が真っ赤な顔で、涙でグチャグチャな顔で、俺の名前を呼んだ声だけが
耳の奥に深く響いた。
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革ベルト
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storm1030(プロフ) - つづきは？ (2015年6月27日 18時) (
レス) id: 43817020fb (このIDを非表示/違反報告)
なつみ(プロフ) - すごく素敵なお話ですね。とても感動しました。その後が気になります(´ω｀) (2015年3月1日 16時) (レス) id: 2d33a07c6c (このIDを非表示/違反報告)
優(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます。瀬音さんのお話がだいすきです。未成年なのでフラグがついていない作品を読ませていただいています。どれもこれもどストライクです。続きを楽しみにしています。時子さん切ないっ……!! (2015年2月4日 16時) (レス) id: 785f67a003 (このIDを非表示/違反報告)
ひつじー(プロフ) - 更新１話分で泣いて、オマケで引っ込んだ……なんか思い通りにされすぎてコワイ！子供の卒園式でちょっと泣いて友達に驚かれるくらい、全く泣きそうにない人間なんですが……。 (2015年2月4日 5時) (レス) id: 999ce25bef (このIDを非表示/違反報告)
ハプ(プロフ) - トキコさんと翔さんのお母さんの気持ちを考えたら、切なすぎて何とも言えない感情になりました。 (2015年2月3日 22時) (レス) id: c475130eed (このIDを非表示/違反報告)
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