２３ ページ24
ガタン、と大きな音が外でした。
ビクと雫が身体を強張らせる。
翔「････予報通り、風が酷くなりそうだな」
箸と茶碗を置いて立ち上がる。
翔「玄関前の鉢植えを全部家に入れてくるよ」
前の住人が置いたままだという鉢植えは、居住者がいない時も大家さんが水やりをしていたらしく
小さな花をつけていた。
バババ････大きな音を立てて屋根に雨が当たり出した。
「予報より酷くなるんじゃないかしら」母さんも箸を置いて、窓の外を見た。
・
・
「ああ。･････全部、飛んでしまうわ」
こんなに強い風じゃ、全部。飛んでしまう。
母さんが独り言のように呟いた意味は、この時は分からなかった。
・
・
・
玄関のドアを開けるとブワァ！と強い風が入り込んでくる。
翔「･････っ！急にきたな････」
「翔、気をつけて」
少しドアを開けただけなのに風が雨を俺に当てて、鉢植えに伸ばした腕はあっという間にびしょ濡れになった。
翔「レインコートあったっけ？」
ドアを閉めて聞く。
「私、持ってるよ」雫がそう言い、二階へ上がっていく。
「中学の、林間学校の時に買ったやつ」すぐに戻ってきた雫の手には、ネイビーのレインコート。
翔「俺入るか？笑」
「入るよ。フリーサイズだもん」雫が笑う。
翔「ほんとだ。デカイな笑」
「･･･････お母さんの、字だよ」
広げたレインコートの内側に、シオリが書いた「雫」の名前。
「私、字下手だからさ、お母さんに書いてもらってたの」
小さな所に遺るシオリの気配。この先も、少しずつ、ポロポロと、毀れるように
シオリの居た気配を俺は感じて生きていくのだろう。
・
・
・
レインコートを着て、またドアを開ける。
ガタガタと、さっきよりも大きな音が上でして、俺は雨粒に目を細めながら屋根を見た。
瓦とは呼ばないのだろうか。茶色い屋根の一部が、風に吹かれ、バタンバタンと、めくれあがっている。
翔「･･･あれ、危ないな」
「翔、やめなさいよ。あなたが危ないわ」
母さんが細く開けたドアから眉を顰めて俺を見た。
翔「大家が置いてたよな。脚立」
「翔、危ないってば」
翔「大丈夫だよ。雨漏りしても困るし、あれが飛んでどこかに当たったらもっと危ない」
雫と母さんの心配そうな顔に笑い、屋根へと脚立をかける。
ラッキーアイテム
革ベルト
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1143人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
storm1030(プロフ) - つづきは？ (2015年6月27日 18時) (
レス) id: 43817020fb (このIDを非表示/違反報告)
なつみ(プロフ) - すごく素敵なお話ですね。とても感動しました。その後が気になります(´ω｀) (2015年3月1日 16時) (レス) id: 2d33a07c6c (このIDを非表示/違反報告)
優(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます。瀬音さんのお話がだいすきです。未成年なのでフラグがついていない作品を読ませていただいています。どれもこれもどストライクです。続きを楽しみにしています。時子さん切ないっ……!! (2015年2月4日 16時) (レス) id: 785f67a003 (このIDを非表示/違反報告)
ひつじー(プロフ) - 更新１話分で泣いて、オマケで引っ込んだ……なんか思い通りにされすぎてコワイ！子供の卒園式でちょっと泣いて友達に驚かれるくらい、全く泣きそうにない人間なんですが……。 (2015年2月4日 5時) (レス) id: 999ce25bef (このIDを非表示/違反報告)
ハプ(プロフ) - トキコさんと翔さんのお母さんの気持ちを考えたら、切なすぎて何とも言えない感情になりました。 (2015年2月3日 22時) (レス) id: c475130eed (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
