＊カルマの欠片たち＊ (ページ16)

今日:24 hit、昨日:1 hit、合計:242,096 hit

永遠の記憶＊松本潤＊３ページ16

ピ。社長室に繋がる廊下にあるドアの指紋認証に指を翳す。

万全のセキュリティを期すドアも、廊下も、この男をスルリ。と通すのが癪に障る。

社長室に入ると、イタリアから直輸入させたソファに男が軽やかに座った。

・

「いつの時代も成功者になる方ですね」

・

花瓶に生けられた花を１本取り、美しい！と思ってもいないことを言う。

潤「いつの時代も彼女に会えない」

短く答える。

・

・

「会いたい人に会える程、世界は優しくないと何度もお伝えしたでしょう」

・

「本来は１度だけなのです」

ソファの上で花びらを一枚一枚契っては笑顔で捨てていく、ニノミヤカズナリ。

いや、最初は違う名前だった。もう思い出せない。

和「１度だけの人生だからこそ、愛に生き、愛に死ぬ」

・

・

何年前･･･何十年前･･･何百年前････もう年月に確かな記憶はない。

何度も生まれ、何度も探し、見つからず命を終える。

何度繰り返したのか、その回数もあやふやだ。

・

確かなのは、愛したあの人の全てだけ。

・

潤「なにしに来たんだよ。あいつの居場所でも教えてくれんの？」

パソコンの電源を入れながら、分かりきったことを聞いてみる。

・

和「それはルール違反」

・

和「数えきれない人生の中で、彼女を探すのがあなたに課せられた運命」

・

・

課したのはお前だろうが。

内心で毒づく。

ふざけるな！と殴りかかったこともあるし、

頼むからあの人の居場所を教えてくれ、と泣き喚いて縋ったこともある。

前世でも、その前でも、いつもこの男は同じ顔、同じ表情で冷たく笑った。

・

「あなたには永遠の記憶がある。その記憶で永遠に探せばいいのでは？」

・

・

人を愛しただけだ、と叫んだ。

また会えることを願っただけだ、と叫んだ。

いつもニノミヤカズナリは俺の慟哭をつまらなそうに聞き、言った。

・

・

「生きる願いすら叶わなかった彼女の方がよっぽど哀れだ」

・

「苦しいのはお前じゃねぇんだよ」

・

「遺されたお前じゃない、遺した彼女の方が辛いと何故、気付かなかった？」

・

俺はその言葉に答えることが出来ず、また人生を繰り返してる。