稲荷様 ページ4
用意されていた服を身に纏う。
綺麗な帯を締めて、上から羽織りを着させられる。
「綺麗ね……」
数人が私の衣服や髪型を整えてくれている中、
その中の一人がそう言った。
「そうですか、えへ、ありがとうございます。」
「きっと稲荷様もお喜びになるわね、こんなに綺麗な子が
捧げられるんですもの。」
にこりと微笑んだのは私の隣人である野口さん。
「そうですね、喜んで頂ければ良いのですが…」
「でも稲荷様も不思議よねぇ、水無月さんの娘さんの方が余程綺麗だと思うのだけれど…」
そう私の方を見て笑いながら言ってくる杉下さん。
私だって、それは思う。何で私なんだろって
稲荷様はどうして私がいいんだろって考えちゃう｡
「でも、それでも稲荷様は私を選んでくださったので。上手く言えませんが、私は稲荷様の選択を間違っているとは思いません。」
「え？あ、そうね｡稲荷様が決めた事だものね」
取り繕った様な笑みを見せる杉下さんは､冷たい声でそう言うと私の頬を強く掴み、化粧を施した。
「じゃあ頑張ってね｡」
そう言うと私の方を見もせずに杉下さんは出ていった。
「気にしないでいいのよ、杉下さんいつもああなのよ」
野口さんの目尻を下げて笑う顔は母を連想させた。懐かしい笑い方だ。
「いえいえ、私も考えていた事ですし。
まぁ多少は困惑しましたけれど､気にはしてないです」
「そう､でも本当に困っちゃうわね。じゃあ宮ちゃん頑張ってね。｣
私の手をぎゅっと握ると中野さんは
心配そうにこちらを何度も振り返りながら
ゆっくりと出ていった。
どうやら儀式の準備が整ったらしい、数人の女性が入ってきて盃に酒を注ぎ､灯篭に火を灯した。
ぼーっとしているうちに
儀式が終わって村の女性に手を引かれ、
下駄を履く。暗い森の中を歩き続けて数分。
「ここからは生贄となる人しか入れないの、
これで本当にお別れ。最後に何か伝えたい人はいるかしら？」
「……とお伝えください。」
「わかったわ、じゃあその人が来たらそう言えばいいのね」
「はい。ありがとうございます。宜しくお願いしますね。」
彼女は私に背を向けて去っていった。
ここからは本当に一人だ､何が起こるのだろう。
強い風が吹いて葉が空を舞い、
私は思わず目を瞑った。
「へー、今年はこの子なんやねぇ｡
まぁ僕が指名したからなんやけど｡」
目を開けるとそこには、
妖艶な微笑みを浮かべる男性が立っていた。
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来夏_raika(プロフ) - 心愛さん» コメントありがとうございます！更新頻度はかなりゆっくりめですが楽しんで頂ければ幸いです〜！これからもこの作品をどうぞ宜しくお願い致します；； (2018年12月5日 21時) (
レス) id: 4db2d60ea2 (このIDを非表示/違反報告)
心愛 - 更新楽しみに待ってます！ (2018年12月4日 21時) (レス) id: 1b1d47c664 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：raika | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/seyu/
作成日時：2018年8月26日 23時
