『ガラムの義賊団』part2 ページ11
「ここは...」
住みかに近寄る。所々寒暖の差により壊れている物もあり、後数年で完全に壊れそうだ。
しかし、廃れても尚消えない厳かさが僕の歩みを止めさせた。
「今回はここかな」
そして定住を決めた。勿論、無断で。
玄関のような場所には呼び鈴があり、押すとブザーの音が荒涼とした大地に広まった。
『なんじゃ、追い剥ぎか。それとも死神か』
「え、と───生憎、どちらでもありません。旅のものです」
しゃがれた野太い声がした。
『嘘を言え。こんな何もない所で何を旅するというのだ』
心底信用ならん、といった口調で正論をぶつけてくる老人の声は、どこか弱々く感じる。
「目が覚めたらここに居ました。というのでは駄目ですか?」
『───はぁ、よい。入れ』
ガチャリ、と鉄製のドアが開く。僕は奈落へと誘われたような気分になり、少し気圧された。が、逡巡も止め、腹を括る。
伊達にこの人生を送っていない。地獄なら何度でも見た。そして、これからも。
暗闇に踏み込む。
『ああ、足元暗いからな。気を付けろよ』
不器用ながらに心配をする老人の声が、狭い壁に反響して背後で聞こえた。
▼▲
入って直ぐにある階段を下ると、一通り生活必需品が揃った一部屋があった。
「──流石に予想外だ」
「そうかい。そりゃあ悪かったな」
横には老人がいた。
背丈は高く、筋骨隆々とした身体つき。全く衰えを感じさせない鋭い眼光は、油断することなく僕の全身を射ぬいている。
「こんにちは。ガラムさん」
「おう、怪しい旅人の坊主」
そのまま、暫く僕らは語り合った。旧友の仲のように。僕が今まで旅した世界のこと、彼が今まで見てきた世界のこと。
そうして、明けない夜を明かした。
「ところでガラムさん。あなた、もうすぐ死にますよね?」
「よく分かったな、坊主。ああ、そろそろ寿命さなぁ...もっと、旅してみたかったわい」
去れど、後悔など全くもってしてなさそうな顔。
「後悔はありませんか?」
「そうさなぁ...いいか、坊主。後悔なんてものぁするもんじゃねぇ。何故ならな、それはやりきった者の特権だからだ。俺ぁ随分中途半端にしちまった。俺に、後悔する資格なんてねぇんだよ」
ガラムさんは独白するように語った。
彼は全盛期、百人もの仲間を引き連れて義賊をしていた。悪名高い貴族を挫き、貧困状態にある村々に配って回った。
けれど、ある日、厄介な貴族に目を付けられたガラム義賊団はあっさりと崩壊してしまった。
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Nora(プロフ) - 夢花(仮垢)さん» 感想、ありがとうございます。序章のことでしょうか...?そちらでしたらナハトさんが書いたのでイマイチ分かりませんが、かっこいいと言ってもらい、感激です!これからも影ながら応援してくださると嬉しいです。 (2018年10月4日 19時) (レス) id: e36332a8d8 (このIDを非表示/違反報告)
夢花(仮垢) - この物語の書き方…言い方が凄く好きです!複雑だけど、だからこそ不思議な感覚があって。凄くかっこいいです!!あと、最初の最初の言い回し…もしかしてA●!好きだったりします?(一文字だけ作品名化してますが)だとしたら嬉しいなぁと(( では、これにて失礼 (2018年10月4日 19時) (レス) id: 1ce7d18474 (このIDを非表示/違反報告)
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