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センラside
Aからの「行きます」というメッセージのおかげでモヤモヤしていた心を一時的に吹き飛ばすことができ、なんとか定時少し過ぎくらいに仕事を終わらせた。
Aは定時ちょうどに書類を提出したらしいのだが、俺が終わるまで付き合うと横で作業をしてたんよね。
誘ったの俺やから、ちょっと申し訳なかったわ…。
今日はいつもの居酒屋ではなく、少しお洒落なレストランにきた。
見慣れた引き戸ではなく、繊細な彫刻が施されたドアを開ける。
店内は比較的シンプルにまとめられていて、窓際のステンドグラスだけが鮮やかに輝いている。
余計な色彩がないおかげで、ステンドグラスから差し込む光がとても美しく店内を彩っていた。
「わ、お洒落なお店ですね」
どうやらAの好みにあっていたようで、楽しそうにキラキラした瞳で店内を見渡している。
決まったあとの昼休憩をフルに使ったかいがあったもんやな。
店員さんに案内されるがままに、端の方の席に向かい合うようにして座った。
「とりあえず頼もか」
二人でメニューをパラパラと捲る。
可愛らしい手描きのイラストが描かれていたため、読み取りにくい筆記体でもどういう飲み物なのかはわかりやすい。
やはり人間というものは限定に弱いらしく、俺もAも適当にいつもの店にはないものを頼んだ。
「突然こんなお洒落な場所に連れてきてくださるなんて、どうしたんですか」
「あれ、お気に召さんかった?」
「いえ、私の好みにあっているというか、とても好きなんですけど……」
「こんな素敵なところ、なんだか慣れなくって」と照れたように微笑む彼女の笑顔を見ただけで、とりあえず今日の仕事の疲れは全て吹き飛んだ。
まぁ、突然飲みに誘われたと思ったら全然知らないところに連れてこられたわけやし、驚くのが普通やな。
「今日は、Aと話したいことがあるんよー」
「話したいこと?」
あ、今の動作かわいい。
きょとん、とした瞳で首を傾げるというこの動きが、ここまで可愛く自然に出来る大人おるんやね。
反則、やろ……。
思わず赤くなりそうになった頬をなんとか引き締め、Aときちんと目を合わせる。
俺の真剣な瞳に驚いたのか、少しだけ瞳孔を開いた後、大事な話があると察したようで目の色を変えた。
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響 - これからも頑張ってください!長文失礼しました。(続きです。初めてこんなにコメント書きました(笑)) (2022年3月2日 17時) (レス) id: 7b474202c0 (このIDを非表示/違反報告)
響 - 日替わりのほうで予告を見て読ませていただきました!語彙力ないのでうまく伝えられるかわかりませんが一つ一つのお話がしっかりしていて話の展開も全然急じゃないのに飽きなくてすっごくいい作品でした!個人的には番外編の志麻さんが出てくるお話が好きです(笑) (2022年3月2日 17時) (レス) @page44 id: 7b474202c0 (このIDを非表示/違反報告)
坂ちゃん(プロフ) - やばい。すげぇ似てる。私、恋人いるんですけど、坂田家なんです。その上恋人の好きな色は黄色... (2018年12月24日 11時) (レス) id: 2e3d2564c8 (このIDを非表示/違反報告)
せらてゃ - 全て読ませて頂きました!!小説読んでて初めて笑いましたwwおもしろいとこがたくさんあって笑っちゃいましたwもうかわいかったです!!これからも頑張ってください(><) (2018年11月25日 1時) (レス) id: 838c277702 (このIDを非表示/違反報告)
ほわいとふぃっしゅ(プロフ) - つぼみさん» そのように言っていただけて本当に嬉しいです……。少し先になってしまうのですが、坂田さんの短編を書かせて頂きたいなとは思っているので、気長にお待ちください!! (2018年10月29日 18時) (レス) id: b3ad7ee62f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほわいとふぃっしゅ | 作成日時:2018年9月8日 22時