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センラside
「お待たせしてすみません。食べましょ!」
「ん、食べよ〜」
手を合わせ、二人同時に「いただきます」と言う。
ラーメンを啜りながら、目の前でチーズホットドッグへケチャップとマスタードをかけているAを見つめている。
「あっ」
「どうしたん?」
Aは突然大声を出し、満面の笑みでチーズホットドッグを指さした。
正確には、ケチャップのマスタードの部分。
「見てください、さかせんカラーですよ…!!」
語尾の上がりようから、喜んでいるのが伝わってくる。
ただの、ケチャップとマスタードだけれど、でも、それは確かに俺と坂田の色で、Aは推しである坂田だけじゃなく、黄色をきちんとセンラの色だと認識してくれていたわけで。
「そうやね」
それがたまらなく嬉しかった。
じゃあやっぱり、さっきの黄色もセンラカラーだと気がついていて買ってくれたんかな。
それだったらすごく、嬉しい。
Aは美味しそうに伸びるチーズを器用に食べている。
「美味しそうやね。一口くれへん?」
「ふぉうぞ〜」
てっきり串ごと渡してくれると思っていたら、Aは串を自分の手で握ったまま腕を伸ばして、チーズホットドッグの部分だけをこちらに向けた。
これって、ちょっと痛いカップルがする「あ〜ん」ってやつやん。
軽く視線を動かすと、周囲には俺たちと同じように向かい合って座っているカップルだと思われる男女がちらほらといた。
少し痛いなと感じる格好をしている彼女も、さすがにその手に持っているマシュマロを差し出してはいない。
この状況って、周りから見たらカップルにしか見えなくて、しかもちょっぴり痛いんちゃう?
周りからの視線がむず痒くて、思わず口元が緩みそうになる。
「あれ、折原さん、食べないんですか?」
Aが突然顔をあげたので、表情筋をフル活用して緩みかけた顔を戻した。
あっぶな……さっきまでの顔、絶対キモかったって。放送事故レベル。
「ごめん、ぼーっとしとったわ。頂きます」
少し周囲からの視線を気にして、彼女のもつチーズホットドッグにかぶりつく。
伸びたチーズの全てをなんとかして口の中に入れると、Aはそれを大層楽しそうに眺めていた。
「……そんな見てて楽しい?」
「楽しい、ですね」
ふふふ、と微笑みながらAは答える。
何が楽しいのかこれっぽっちもわからへんけど、Aが楽しいならええか。
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響 - これからも頑張ってください!長文失礼しました。(続きです。初めてこんなにコメント書きました(笑)) (2022年3月2日 17時) (レス) id: 7b474202c0 (このIDを非表示/違反報告)
響 - 日替わりのほうで予告を見て読ませていただきました!語彙力ないのでうまく伝えられるかわかりませんが一つ一つのお話がしっかりしていて話の展開も全然急じゃないのに飽きなくてすっごくいい作品でした!個人的には番外編の志麻さんが出てくるお話が好きです(笑) (2022年3月2日 17時) (レス) @page44 id: 7b474202c0 (このIDを非表示/違反報告)
坂ちゃん(プロフ) - やばい。すげぇ似てる。私、恋人いるんですけど、坂田家なんです。その上恋人の好きな色は黄色... (2018年12月24日 11時) (レス) id: 2e3d2564c8 (このIDを非表示/違反報告)
せらてゃ - 全て読ませて頂きました!!小説読んでて初めて笑いましたwwおもしろいとこがたくさんあって笑っちゃいましたwもうかわいかったです!!これからも頑張ってください(><) (2018年11月25日 1時) (レス) id: 838c277702 (このIDを非表示/違反報告)
ほわいとふぃっしゅ(プロフ) - つぼみさん» そのように言っていただけて本当に嬉しいです……。少し先になってしまうのですが、坂田さんの短編を書かせて頂きたいなとは思っているので、気長にお待ちください!! (2018年10月29日 18時) (レス) id: b3ad7ee62f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほわいとふぃっしゅ | 作成日時:2018年9月8日 22時