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Aside
「千羅くんも幸せそうに見えるよ」
「ほんまに?実際、結構幸せやからね」
楽しそうに談笑を続ける二人。
多分きっと、ちょうど柱に隠れていて二人からは私が見えないんだろう。
気づいてって思う反面で、気づかないでって思っている自分もいる。
まだ待ち合わせの時間まではまだまだあるから、今すぐ行く必要なんてない。
楽しそうな二人の中に割り込んで入っていくのは嫌だな。
でも
「えっ、そうなん!?」
「うん、そうなの」
折原さんがその女の人と楽しそうに話してるのは、もっと嫌だな。
そう思って一歩歩き出す。
「あっ、A〜!」
折原さんはこちらに気づいたようで手を振ってくれた。
小走りでそちらに向かうと、藍色のワンピースを着た女の人が楽しそうに微笑んでいた。
「この子が、Aちゃん?」
「うん、そうそう。俺の後輩の、黄龍Aさん」
「こんにちは〜、千羅くんの元カノの、三色です」
柔らかい笑みを浮かべた三色さんに対して、「初めまして、黄龍です」と笑って頭を下げたが、ズシンと重たい鉛のようなものが落っこちたのではないかと錯覚するほど、心に圧を感じた。
私が来る前に、元カノさんと会ってたなんて、どうして……?
わざわざこんな早く来て、私にバレないように待ち合わせしていたのかな。
「今日、ちょっと彼氏と遠出しに来てるの。そしたら千羅くんに会って……久しぶりだったから、ついついお話しちゃったんだ」
「え」
三色さんはまるで私の心を読み取ったかのように話す。
どうして、と思うよりも先に、彼女に彼氏がいた事に安堵している自分がいた。
あんなに重たかった心が、羽が生えたのかと思うほどに軽くなる。
「可愛い彼女さんが来たから、戻るね。またどこかでお会いできたら嬉しいな」
そう言った三色さんは「お邪魔しました〜」と付け足して、手をひらひらと振りながら駅の方へ向かってしまった。
「彼女じゃないです…!/ちゃうって…!」
折原さんと二人で完璧にハモらせて叫ぶ。
三色さんは聞こえていないのか、気付かないふりをしているのか、振り返ることはなく駅の中へ消えていった。
ちらりと折原さんの顔を見ると、綺麗な頬を少し赤くしている。
それに気づいてただでさえ少し熱くなっていた頬に、さらに熱が集まるのを感じた。
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響 - これからも頑張ってください!長文失礼しました。(続きです。初めてこんなにコメント書きました(笑)) (2022年3月2日 17時) (レス) id: 7b474202c0 (このIDを非表示/違反報告)
響 - 日替わりのほうで予告を見て読ませていただきました!語彙力ないのでうまく伝えられるかわかりませんが一つ一つのお話がしっかりしていて話の展開も全然急じゃないのに飽きなくてすっごくいい作品でした!個人的には番外編の志麻さんが出てくるお話が好きです(笑) (2022年3月2日 17時) (レス) @page44 id: 7b474202c0 (このIDを非表示/違反報告)
坂ちゃん(プロフ) - やばい。すげぇ似てる。私、恋人いるんですけど、坂田家なんです。その上恋人の好きな色は黄色... (2018年12月24日 11時) (レス) id: 2e3d2564c8 (このIDを非表示/違反報告)
せらてゃ - 全て読ませて頂きました!!小説読んでて初めて笑いましたwwおもしろいとこがたくさんあって笑っちゃいましたwもうかわいかったです!!これからも頑張ってください(><) (2018年11月25日 1時) (レス) id: 838c277702 (このIDを非表示/違反報告)
ほわいとふぃっしゅ(プロフ) - つぼみさん» そのように言っていただけて本当に嬉しいです……。少し先になってしまうのですが、坂田さんの短編を書かせて頂きたいなとは思っているので、気長にお待ちください!! (2018年10月29日 18時) (レス) id: b3ad7ee62f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほわいとふぃっしゅ | 作成日時:2018年9月8日 22時