帰り道 ページ23
｢…先輩はよかったんですか、ボーリング行かなくて｣
暗い道に、先輩と二人きり。
夜の静けさが、
世界には先輩と私しかいないような、そんな錯覚を起こさせた。
心臓のドキドキが、聞こえてないといいけど。
｢それより、こっちのが大事。
Aちゃん一人で帰らせるわけにいかないでしょ｣
｢別に、私は…｣
｢大丈夫、とか言わないでね。
女の子がこんな暗いところ一人で歩いてて、大丈夫なわけないから｣
｢……｣
そっと、視線を先輩に向ける。
街灯で闇の中に浮かび上がった先輩の横顔は、
いつもと違って見えた。
…なんか、綺麗。
｢足、大丈夫?｣
｢えっ?｣
｢…踏まれたとこ｣
先輩が、ちょっと申し訳なさそうな表情をする。
足はもう、ほとんど痛くない。
先輩と桜ちゃんの優しさが詰まったばんそうこうを巻いてるから。
｢全然、大丈夫です｣
安心させようと笑ってみせると、
先輩が驚いたような顔をした。
｢…何ですか｣
｢いや、なんか、
Aちゃん笑ったなって｣
笑っちゃ悪いか、と思ったけど口には出さない。
もう、無愛想な態度はやめようって決めた。
｢話、蒸し返すようで悪いんだけどさ、｣
｢はい｣
｢玲子先輩には、俺からちゃんと言っとくから。
それでも、もし、また何かあったら…
その時は必ず俺に言うこと｣
｢…はい｣
なんかほんと、お兄ちゃんみたい。
でも、それでもいい。
そのおかげで先輩のそばにいれるなら。
なんて思うぐらい、気づいたら先輩のこと好きになってた。
すぐ近くに私の家が見えてくる。
幸せな時間ほど短く感じる、って本当なんだ。
｢今日、楽しかった?｣
先輩の声には、不安がにじんでいるような気がした。
｢すごく、楽しかったです。
お友達もできましたし｣
私がそう答えると、先輩がほっとしたように笑う。
｢よかった｣
｢…だからもう、先輩も気にしないでください｣
｢ふふ、いい子だね、Aちゃん｣
いい子、とか完全に子供扱いじゃん。
まぁいっか、先輩の笑顔見れたし。
｢よし、ここまでかな｣
いつの間にか、家の前。
｢…ありがとうございました｣
プレゼント…渡したいな。
｢じゃ、おやすみ｣
あ、行っちゃう。
｢…先輩!｣
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作者名：まな | 作成日時：2012年8月24日 16時
