先輩の、となり。２

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玉森先輩に、付き合ってほしい、って言われた文化祭。

自分のクラスに戻って、カエルのかぶりものをかぶって校内をまわってる間も、私の足元はずっとふわふわしていた。

地に足がついてないってまさにこのこと。


焼きそばを焼いている香ばしいにおいがして、見ると太輔のクラスだった。

太輔にはちゃんと言わないと。

誰かから耳に入るとかじゃなくて、自分でちゃんと。

行列ができているから、ひょい、とのぞくと茶色いロングヘアのウィッグかぶった女装してる太輔が焼きそばを焼いてる。

ぶふ！って思わず吹き出す。

太輔が怪訝な顔をして私を見たから、カエルの頭をはずす。

「なんだAか」

「めちゃくちゃかわいい。というか綺麗？私より綺麗」

「当然」

「わー腹立つー」

「もう朝から見せ物にされまくって開き直るしかなくなった」

焼きそば買う？って太輔が聞くから、首を振った。

「あとで、ちょっと話せる？」

「……ん、わかった」


うちの学校は後夜祭がないから、片付けが終わったら解散。

騒がしかった校内もだいぶ静かになった。

麻美が後ろからのぞきこんでくる。

「Aー帰ろ！」

「麻美、あの、実は」

今日の昼休みに先輩から告白されたことを、言うと。

「えええー！A！よかったね、おめでとう！」

って抱きしめてくれた。

「ありがとう」

「その割に落ち着いてるね？
Aのことだから、空まで飛んでくくらい浮かれそうなのに」

「うん、そうなんだけど。帰りに太輔と話しようと思って」

「あー……そか。そうだね」
「うん」
「二人の方がいい、よね？」

麻美がそう聞いてくれたから、頷いた。


太輔のクラスをのぞきに行ったけど、いなくて、あれ？と思ってたら、太輔からラインが来た。

『公園で待ってるわ』

公園ってきっとあそこだな。

太輔と小さいころいつも遊んでた公園。

ジャングルジムとブランコと滑り台しかない、そんなに広くない公園で、私たちはいつも走り回って遊んでた。

太輔が野球を始めてからは、素振りをしたりシャドーピッチングするのを、よくジャングルジムから眺めてたっけ。


なんとなく。

太輔は私が何を話すのか、気づいてるような気がした。

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