先輩の、となり。

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文化祭の準備も忙しかったけど、野球部も秋の大会が近づいている。

秋季大会の結果は春の選抜につながるから、みんな気合いが入ってた。

いつの間にかだいぶ日も短くなって、ひんやり風が吹く帰り道を太輔と歩く。

「もうすぐだね、秋季大会」
「そうだな」
「練習順調そうだよね」
「うん、我ながら調子いい」

「頼りにしてるよ、エース」
「おう」

太輔は白い歯を見せて笑った。

「あ、そういえばこないだ千賀くんに会ったよ」

「まじで？俺も会いたかったな」

太輔仲良かったもんね。

「文化祭来るって言ってた」
「お、じゃあ会えるじゃん」

と、ラインの受信音がピロン、と鳴る。

『文化祭13時から休憩だよ。Aちゃんは？』

玉森先輩からだ。

『私まだわからないんですけど、13時希望してみます！』


「先輩から？」
「なんでわかるの？」

「そんなデレデレした顔してたら誰でもわかるわ」

どんな顔してんの、私。



文化祭当日。

タピオカミルクティー屋さんはなかなかの忙しさだった。
私はカエルの全身着ぐるみを着てタピオカミルクティーの看板を持って校内をうろうろ。
けっこう暑い。

あ、ここ先輩のクラスの妖怪の喫茶店の近くだ。

白い着物きた幽霊みたいな格好した人やカッパのお皿つけた全身緑のタイツを着た人が、妖怪喫茶はこちらでーす、って言ってる。

先輩どこだろ。

「不審なカエル発見」

後ろから声が聞こえたから振り向くと。

白いシャツに黒の細身のパンツ、裏地が赤の真っ黒なマントを着た先輩が笑いながら立ってた。

「先輩！」

カエルの頭をはずす。

「やっぱAちゃん。だめじゃん仕事さぼっちゃ」

「先輩の吸血鬼が見たくて」

「見て、これ。キバ」

あーん、て先輩が口を開けたらなかなかリアルなキバがはえてる。

「どう、吸血鬼に見える？」

「はい、いや、でも」
「ん？」

先輩、吸血鬼じゃなくて王子様みたいだよ。


「玉森くん早く来て！
中にいてくれないとお客さん減っちゃうから」

先輩が呼ばれて、引っ張って行かれた。

「Aちゃん、あとでね」


それからは真面目にお仕事。

お昼近くになったから、自分の教室にいったんもどる。

「A、お疲れ」

麻美が千賀くんと歩いてきた。

「あ、千賀くん。太輔が会いたがってたよ」

「ガヤんとこ今行ってきたよ。女装姿笑ってやろうと思ったらまあまあタイプだった」

もうすぐお昼休憩。

先輩と何食べよかな、楽しみ。

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