先輩の、となり。

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「前に付き合ってた他校の彼女とも、それで別れたんですか？」

「……うん。大崎先輩が好きかもって気づいてからも最初はそう思いたくなくて。
しばらく付き合ってたけど、やっぱりうまくいかなくて別れた」

「誰にも言わなかったのも、大崎先輩のためだったんですね」

たぶん玉森先輩は、大崎先輩に自分の気持ちを言うつもりはなくて。

彼女がいるってみんな思ってる方が、一緒にいても変に噂になったりしないと思ったんだろうな。


「北山先輩に気づかれたり、変に思われたくなかったのも、あるんだ」

ずるいよね、って先輩は小さく笑った。


「昨日……先輩が大崎先輩抱きしめてるとこ見て、すごくショックでした」

あんなに泣いたの久しぶりだった。

「だけど、玉森先輩も。大崎先輩が北山先輩と一緒にいるとこ見て今までたくさん傷ついてきたのかなって思いました」

前に生徒会室の黒板の前で2人が抱き合ってるのを見た時、先輩笑ってたけど。

本当はすごく傷ついてたんじゃないかな。


「先輩の気持ちは先輩のもの、です」


先輩が顔を上げて私を見た。


「誰を好きでも。
その気持ち、大事にしていいと思う」

「……Aちゃん」

「だって私。
先輩のこと好きになってから、毎日がきらきらして楽しくて。
誰かを好きになるってすごいって思いました」


先輩が、息をはいて目線を落としてちょっと笑う。

「すごいのは、Aちゃんだよ」

「え？」

「いつでもどんな時でも、まっすぐで。
今日だってどう考えても俺が悪いのに。
逆にはげましてどうすんの」



先輩が私を見た。


「もう嫌われたと思ってた」

「そんな……」

「もう口聞いてくれないだろうなって」

「嫌いになんて、なれないです」


たぶん。

世界中の人が玉森先輩を嫌いになっても。

私は先輩が好きだ、と思う。




と、空気を読まない私のお腹がきゅるきゅる、って鳴る。

「お腹へった？なんか作ろうか？」

「え？！いえいえ。お母さんが作ったおかゆあるんで大丈夫です」
「あ、そうなの？じゃああっためてきてあげる」

「大丈夫です、自分で」

急に立ち上がったら、くらってした。

玉森先輩がとっさに抱きとめてくれる。

「だめだよ、寝てて」

おでこに玉森先輩のおでこがこつん、とふれる。

「……まだ熱い」


キッチン借りるね、って先輩が部屋を出ていった。


たぶん。



今ので熱上がった、と思う。

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