先輩の、となり。

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次の日。

雨にぬれたからか、先輩のこと考えすぎたからか、熱が出た。

「お母さん仕事行ってくるから、ちゃんと寝ときなさいよ。おかゆ食べて薬飲んでね？」

「はーい……」

お兄ちゃんが私の部屋のドアからひょっこり顔を出す。

「珍しいじゃん、知恵熱？」
「うるさいなー……」
「俺今日野球部の練習ないから。何かあったら言えよ」

「うん、ありがと」

まあ、口は悪いけどなんだかんだ優しいんだよね。



いつの間にか眠ってて、夢を見た。

私は先輩と花火見てた。

きれいだね、って笑いながら。

でも気づいたら隣に先輩はいなくて。

走っても走ってもいなくて。

やっと見つけた後ろ姿は、昨日見た大崎先輩を抱きしめてる背中だった。


そこで、呼ばれたような気がして、目が覚めた。

「夢ならもうちょっといい夢……」


「夢、見てたの？」


ん？この声。

横を見ると、そこには。

心配そうに私を見る玉森先輩が、いた。


「ぎゃあ！」

思わず布団をかぶる。


え？

え？

なんで先輩がここに？


「おーい。出てきてよ」

「無理です。先輩なんでここに」
「Aちゃんちこの辺だって前に言ってたから、探した。
ピンポン押したらお兄さんが出て、いれてくれたんだ」

お兄ちゃんが？

あ、そうか。私が先輩のこと好きなの知ってるんだっけ。

「お兄さん、野球部の練習だって出かけたよ。
熱大丈夫？」

「え？！」

思わずがばって起きあがる。

「あ、出てきた」

お兄ちゃん今日野球部の練習休みだって言ってたじゃん！

もーう、余計なことを！


「昨日はごめん」


先輩がうつむくみたいに頭を下げる。

「……玉森先輩の好きな人って、大崎先輩だったんですね」

先輩が、うなずいた。

「生徒会で一緒になって、気づいたら好きになってた。
でもその時、もう北山先輩と付き合ってたから」

私はベッドで体育ずわりをして膝のあたりを見ながら黙って聞いていた。

「別れてほしいって思ってるわけじゃないんだ。
俺、北山先輩好きだし尊敬もしてる。
だけどめちゃくちゃモテるから、よく喧嘩してて」

北山先輩、熱烈なファン多いしね。

「相談されたり泣かれたりしたら、ほっとけなくて。
昨日も花火見に行く途中で喧嘩したって泣きながら電話かかってきて……」


昨日の先輩の背中を思い出す。

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