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歩side
「あ、ゆ、み‼」
その大きな声で目を覚ました。目の前には蓮ちゃんの顔があった。
「蓮ちゃ……」
思わず、本名を呼びそうになり、睨まれる。
「れ、レンチンのおかずばっかだからお弁当食べたくないな〜〜〜。」
これは本当。でも、誤魔化し方適当だなオイ。
キョロキョロ周りを見渡すと、お昼休みらしく、教室でお弁当を食べている子以外は、皆いなかった。
「お弁当食べような、あ、ゆ、み‼」
「そうだね、ま、さ、や‼」
私達は、教室から出て、人が少ない体育館裏に向かう。
これが、学園モノのドラマや漫画なら、告白ー！フー！と、なると思うが、今から行うのは会議。ロマンティックの欠片もない。
いろいろ考えながら、体育館裏に向かうと、既に柊木はいた。
「遅い、雅也。」
「悪い、コイツが爆睡してたせいで。」
「クソッ、ぐうの音もでねぇ。」
そう言いながら、お弁当を開き、レンチンの食材を口に入れる。
「じゃあ、僕から報告するね。盗聴器の類は事前にチェックしたけど、この辺にはなかったから。僕らが狙っている酒井創一のスマホに秘聴のアプリをインストールしておいた。」
公安では、盗聴のことを秘聴という。ただ言葉を少し小綺麗にしただけだろ、と思うので私は普通に盗聴と言うけど。
「さすが柊木。仕事が早いな。」
「そういうことが出来ないような特殊なスマホかと思いきや、下っ端だからか案外そうではなかったよ。城崎先生にも伝えといたから。」
「じゃ、次私。さっき、酒井創一の授業があったけど、注射をしている形跡はなし。授業の様子も、まあ至って普通。ウケ狙い重視だとは感じたけど、怪しまれないようにそうしていると思うな。」
コイツを切り口にして、犯罪組織を壊滅させようと、我々公安は奮闘している。すでに、何人かの潜入捜査官がこの組織に潜入しているが、未だ誰も幹部にのぼりつめていない。NOCだとバレて組織の幹部に撃たれ、殉職した警察官もいる。それだけ危険な組織だ。だからこそ外堀から埋めていこうと中学校にも潜入している。
「俺からの報告は特になし。学校を周ってみたけど、監視カメラは学校の備品っぽい物だし、盗聴器もなかった。理科室にも行ってみたけど、特に怪しいものはなし。どれも学校に置いてある薬品だったよ。」
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作者名：梨花帆 | 作成日時：2018年8月16日 21時
